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2020-09-20 08:31
夫人と外交
中山 太郎
非営利団体非常勤職員
安倍晋三前総理は、最近の日本外交でとてつもない活躍をなされた。従来の米や中国を睨んでの対大国外交だけではなく、従来日本の総理が行かないところもこまめに訪問された。アフリカ、中近東もあるが、バチカン外交は今後の日本の対外政策で重要なポイントになるであろう。幸いに、今のアルゼンチン出身の法王は、日本へ親愛の意をお持ちのようだ。法王は、あまり信者の数のいない日本を昨年訪問し、法王選出の権限を持つ枢機卿にも大阪の大司教が任命された。それまでには、安倍さんや麻生さんのきめ細かい外交的手配があったのだ。ちなみに、アジアでカトリック信者が多いのは、フィリピンの9千万、中国の1千万、韓国の5百万で、韓国の文大統領夫妻はカトリック信者だ。今台湾が恐れることの一つは、バチカンが台湾から北京に鞍替えすることだ。水面下で北京と交渉していることが報道などで言われている。バチカンは神父、またその上の司教などの聖職の人事権は手放さない方針だが、最近中国には特別な譲歩をしている。それに対し、香港の教会筋は激しく反発し、バチカンは共産主義中国の怖さ、狡猾さを知らないのだと述べている。バチカンが焦るのは、現在中国のプロテスタント信者が約1億人で、明王朝時代から古い伝統的関係のあるカトリック信者が引き離されているからだという人もいる。
安倍夫人は、特にどの宗教にも肩入れをなされてはいないが、カトリック学校の聖心で、小学校から専門学校で勉強された。本人がどこかで、自分は勉強が嫌いだったので、大学には進まず、短大に当たる同専門学校へ進んだと述べている。しかし、世界は日本とバチカンの親愛さを見ると、首脳の夫人の影響力を感じるようだ。今どの国でも、女性の本来の力が表に出てきて、社会での活躍も目立つようになった。中国在勤の西側の外交官たちに中国の評判が悪かったのは、わざわざ生活の不便な中国へついてきてくれありがたいと思っているのに、夫人を接待する中国人が極めて不作法なことである。例えば、主客であるイベント会場へ到着し、自分が車を出る時は恭しくドアを開いて接待するが、その後夫人が出ようとするとドアをばたりと閉めて、夫人は危うく手をはさまれそうになる。帰宅後文句を言われるのは、その外交官であり、中国生活の不都合さに始まり、その他もろもろの夫婦喧嘩が始まる、などとこぼしていた。しかし、この面でも中国はキャッチアップしつつある。習近平夫人は人民解放軍の歌舞団出身の有名な歌手だが、プーチンやトランプなどが口を極めて称賛している、夫人がおられるだけでも、中国の外交面での貢献は大きい。最近までおられた日本駐在の中国大使夫人について、テレビで同夫人の日本語の立派さ、日本人のようなきめ細かい気配りを、みのもんた氏がよくほめていたのを知る人も多いだろう。
安倍夫人は中国でも友人が多く、評判も悪くないが、知人の米外交官の打ち分け話を紹介したい。対米関係命の小泉政権時代、安倍さんはご夫婦で同総理のお供をした。内輪の昼飯の時、ブッシュ大統領に、「お仕事をしておられて、一番悲しいのは何の時ですか」と言う話になり、ブッシュさんはしんみりと、「戦争で米国の若者が命を失った知らせ受けたときだ」と述べた。その頃、9.11のテロ後の米国社会の好戦的雰囲気の中でアフガン、イラクでの戦闘が続いていた。その話を聞き皆神妙な気持ちになったが、安倍夫人は感情がこもり、泣き出してしまった。ブッシュさんもしんみりとされ、会の後で米側の人たちに、今までこの話を何回かしたが、安倍夫人は心からその内容を受け止めてくれたと述べたそうだ。ブッシュさんは引退後、好きな絵をかいて暮らしておられるが、その多くのテーマは、戦争で亡くなった白人、黒人その他の米国兵士の肖像画だそうだ。
佐藤栄作総理は、現職総理として台湾を訪問したが、事前の話では蒋介石夫人、宋美齢氏が同席するというので、わざわざ夫人を同伴したが、宋美齢氏は直前に夫婦喧嘩でもしたのか、急きょ米国へ出発してしまった。空振りに終わり、佐藤栄作夫人はそれに対し少しも怒らず、冷静に対応され立派だったと双方の外交筋は記憶している。こうした姿は、長く関係者の思い出に残るものだ。9月18日付の本欄の長嶋昭久衆議院議員の「李登輝先生の思い出」は素晴らしい内容文章で感激したが、李登輝さんの傍らにいつも夫人が穏やかな姿で寄り添っておられたのを思い出す。
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