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2020-05-23 21:25
コロナ禍の中国経済
倉西 雅子
政治学者
医療物資の買占めや輸出規制にも見られたように、今般のコロナ禍により、各国とも、自国経済が中国に依存するリスクを嫌と言うほどに思い知らされました。武漢での国際調査を求めたオーストラリアに対して中国が政治的な‘報復関税’を科すなどはその良い例です。中国の目に余る横暴ぶりからしますと、コロナ禍は、以前からその兆候のあった中国離れを加速化こそすれ、中国の求心力を高めるとは思えません。実際に、国内生産化やサプライチェーンの組み換えなど外資企業の脱中国依存も始まっており、中国経済のV字回復には、早、黄信号が灯っています。
実体経済において脱中国の傾向が強まる一方で、金融においても異変が生じつつあります。報道によりますと、アメリカの連邦職員の年金基金を運営するFRTIBは、中国の株式市場への投資を中止する旨を発表しました。同基金の中国株での運用は2018年に始まっていますので、投資額としてはそれ程までに大きくはないのでしょうが、対中批判を強めるトランプ政権の意向を受けたものであることは確かなようです。
また、トランプ政権は、アメリカに上場している中国企業に対する調査も命じていますので、多額の対外債務を抱える中国企業の外貨調達手段も先細りが予測されます。加えて、中国は、コロナ禍の責任を追及される立場にあり、巨額の損害賠償を求められる可能性があります。中国が支払いに応じなくとも、在外中国資産が差し押さえられれば、中国経済へのダメージは計り知れません。中国に対しては、アメリカによる内外両面からの‘兵糧攻め’が迫りつつあります。
上海市場といった中国証券市場での連鎖的な株価暴落も予測され、仮にこうした事態に陥れば、中国における倒産件数が激増すると共に、中国企業が外資に根こそぎ買い取られるかもしれません(もっとも、証券市場の閉鎖や政府による株式買取など、中国政府が強権を以って対応する可能性も…)。状況を見渡せば、中国は、他国に先んじたV字回復を狙うよりも、自国経済の崩壊を真剣に憂慮すべき局面に置かれているように思えます。そして、この問題は米中二国間に留まらず、日本国にも多大なる影響を与えることでしょう。GPIFについても、外資系金融機関に運営を委託していることから、間接的に中国株を運用している可能性もあるのですが、日本国政府も、コロナ禍の被害国、そして、アメリカの同盟国として、金融面での対中投資を見直すべき時なのではないかと思うのです。
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