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2020-01-07 13:35
新年に思う国際貢献などについて
中山 太郎
非営利団体非常勤職員
我が国はよく言われるように大陸から少し離れており、古代中世近世と異民族の侵入に悩まされることなく、自分が受け入れ可能な範囲での大陸の文明を受け入れてきた。地理的に幸運な場所に位置していた。しかし得な面ばかりでなく負の面もある。他の国の人たちも自分たちと同じように考え行動すると考えがちだ。中国の現場にいたころ、企業の責任者たちは、本社から来る社長、重役などの連中のアポ取りに悩まされていた。中国の政府、民間のお偉いさんたちとの面会だ。しかし、そうした人たちのスケジュールは直前にならなければ分からないのがほとんどだ。すると、本社の総務部あたりから、「おい、社長のご日程は少なくとも1週間前には決まらないといけない」などと電話してくる。幾ら当地の事情を話しても、こいつサボって居やがるとの感触だ。大金を使うとか、精いっぱいの利得を手配するとか、走り回り精も根も尽き果てる。
専制政治のいやらしさか、上は鷹揚でも、下の人間は変に意地悪が多い。ドタキャンはしょっちゅう起こる。最近までの日本いじめの時期には、よくイベントを大々的に日中で準備、それも中国先導でやりだしていながら、中央の日本に距離を置けとの空気が出てくると、それっとばかりに訪日団をキャンセル、それも3か日前とかにだ。先進国ではホテル宴会場など皆キャンセル料がとられる。担当者は、お前がしっかりしていないからだとの目で見る会計部門や上司の冷めた態度にうちしがれる。今回のゴーン氏の関西空港からの脱出劇も、いくら何でもそこまでしないと勝手に考えていたのだろう。この件である中国人は、これは明らかに米国の日本いじめの表れだと冗談めかして言っている。同人によると、中国は今これだけ米から虐められると、却って腹を決め、知識人も含め習近平体制のもと一致団結しなけれならないのだとの思いが出てきているそうだ。彼によると、米国が諦めて中国と手を握るようになるのは、5年後10年後のGDPが米国の2倍になった時だという。しかしそれでも中国人一人当たりの収入は、米国人の半分に届くか届かないかそうだ。南米などと同じように一部特権階級のみが生活を満喫できるのだ。
別の知識人が漏らすところでは、同人は国際的もある程度知られる学者だが、両親と離れて暮らしており、夜中の電話にはピクットすると述べる。中国の一般人の医療事情の後進ぶりが目に浮かぶ。赤ひげのいない赤ひげの頃の医療状況なのだ。それで思い出したが、当時は外出時にいつも10万円程度の金は所持していた。私の知人が、タクシーの衝突事故で命からがら近くの病院へ駆けこんだところ、病院側からまず金を出せなければ治療はしないともうしわたされた。毎日新聞の西川恵氏が書いているが、日本、欧米社会は今ポストモダニズムにいて、中国は近代化へまっしぐらの社会だ。欧米社会はポストモダンの混迷の中でその方向性がまだ定まらず、右往左往している面もあり、これは中国を利している。また、最先端のインターネット、AIなどを使い厳しい監視体制を作り出している。しかし、彼らが俺たちの世界だと早合点するのは早いので、今、その足元にも多様化、相対化の波がひたひたと押し寄せつつあるのだ。国際貢献で述べると、これから米を中心とした自由民主諸国と中国を中心とした専制主義国との世界の囲い込み競争が始まりつつある。
日本の2つの例を考えてみたい。一つは、アフガニスタンで亡くなられた中村医師の場合だ。その自己犠牲、現地の人々同じ目線でのねばり強い仕事、その実行力、頭が下がる思いだ。中村医師は、米国の力での治安維持には厳しく反対しておられたそうだ。しかし、そのソフト路線の姿勢での仕事の最中に攻撃を受けたのだった。中村医師の信奉者たちは怒るかもしれないが、もう少しずる賢くふるまってもよかったのではともふと思う。彼が命を懸けて切り開いていた現地の多くの人々の生活向上のためにもだ。作家の曽野綾子氏は、日本財団の理事長なども務められ、国際貢献に尽くされた。同氏はカトリック教徒で、浄財を集めてのアフリカなどの日本人神父やシスターの支援を通じ現地に裨益してもらう活動、アフリカの幼児の医療支援のため日本から医師団を同行しての各種活動、これら無償のお仕事には頭の下がるものがある。しかし、ふと思う。フランスをはじめ主として西欧諸国が教会税などの巨額の資金を活用してのミッション組織の厚い土台がありそのうえでの曽野氏の活動なのだと。各国とも世界での評価を受けるために他を押しのけて行動をとることもある。他国の邪魔をすることさえある。日本はまた、中国、韓国への自然災害での救援チーム派遣など目立つ活動などは特例でない限りできないのだ。しかし、中国でのSARS騒動の際の日本からの地道な諸支援は、今も現地で深く感謝されている。このように日本のできる範囲でしぶとく、着実に、報われることが少ない仕事をこなしていくことは先進国の人間の責務なのかもしれない。
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