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2019-08-06 10:15
米国は韓国に司法解決を求めるべき立場にある
倉西 雅子
政治学者
時事通信社が配信した記事によりますと、米政府高官は、悪化する一途の日韓関係について日韓双方に責任があるとする見解を示したそうです。その背景には、韓国による日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄、即ち、中国、ロシア、北朝鮮の動きを睨んだアメリカ政府の安全保障上の懸念があるのでしょうが、日韓対立激化の発端は韓国側の所謂「徴用工訴訟判決」にありますので、日韓両国を比較しますと、韓国側により重い責任があるように思えます。日本国側としては、同米高官の発言は釈然としないのですが、仮に、アメリカが日韓関係の改善を試みようとするならば、先ずは、韓国に対して、「徴用工問題」の解決を国際司法の場に委ねるように説得すべきではないかと思うのです。
実のところ、その解釈をめぐり紛争となっている日韓請求権協定に関しては、アメリカも無関係ではありません。同協定を含めて1965年に日韓関係が正常化される過程にあって、アメリカは、常に日韓交渉の裏方、あるいは、仲介者としての役割を果たしていたからです。この時、両国政府は、日韓間で対立が生じ、交渉が暗礁に乗り上げる度にアメリカに打診し、その意向を伺っております。その際、朝鮮戦争によって韓国の国土が破壊され、経済も疲弊していたこともあり、アメリカ政府は、どちらかと言えば韓国側の主張に寄り添っていたように見えます(この時期がベトナム戦争中に当たる点を考慮すれば、あるいは、韓国軍のベトナム派兵も絡んでいるかもしれない…)。難航していた交渉は、結局、アメリカの鶴の一声によって日本国側が大幅に譲歩する形で妥結し、正当な根拠を有する請求額を遥かに越える巨額の支援金を韓国側に提供することとなったのです(日本国政府は、韓国に譲歩したというよりは、アメリカに譲歩している…)。
当時の日韓交渉の過程を振り返りますと、アメリカは、同協定成立の影の立役者であると共に、その場に立ち会った‘証人’でもあったことが分かります。否、日韓請求権協定の真の草案作成者はアメリカかもしれず、65年の日韓関係の正常化は、日本側が一方的な不利益を被ったとはいえ、アメリカの外交成果の一つとも言えるかもしれません。となりますと、先日、日本国政府が証拠として提示したように、日韓請求権協定における両国間の合意内容に徴用工の給与未払い分を含む全ての請求権が含まれていることは、アメリカ政府もまた十分に認識しているはずなのです。
こうした事情があればこそ、同協定に対して責任の一端を負うアメリカは、日韓対立の要因となっている同協定について、誠実なる遵守を韓国側に求め得る立場にあります。そして、日韓請求権協定の第三条が、紛争の解決手段として仲裁委員会の設置を設けている以上、アメリカ政府には、先ずもって同手続きに従うよう韓国政府を説得していただきたいと思うのです。当時の日本国政府は、自国に不利であることを承知の上で、個人を含む全ての請求権の放棄を条件として、同協定に署名したのですから。
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