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2019-06-20 20:42
国際金融をめぐるマハティール首相の挑戦
真田 幸光
大学教員
私の知るところ、マレーシアのマハティール首相は「国際金融筋の怖さ」をよく知る政治家であると思います。それは、マハティール首相が若き頃、首相を務めた際、外銀に対する債務返済で苦労をした経験があるからであります。また、そうした経験を背景にし、1997年のアジア通貨危機が発生した際には、いち早く、マレーシアの通貨・リンギットを対米ドルペッグ制に持ち込み、防衛に努めた経験もある政治家です。
こうした中、マハティール首相は、国際交流会議「アジアの未来」と題する講演会に於いて講演し、金価格に連動する東アジアの共通通貨構想を発表しています。共通通貨は貿易取引の決済に利用し、国内取引には使用しないともしています。そして、マハティール首相は、「極東で協力を望むなら、共通の取引通貨から始めるべきである。共通通貨は、国内で使用される通貨でなく、貿易取引決済のための通貨となる。この通貨は金に基づくべきである。金は遥かに安定しているからである。現在の為替制度のもとで、アジアの通貨は外部要因の影響を受け、操作されている。こうしたことを回避すべきである」とコメントしています。行き過ぎた広義の信用創造によって、実体経済を大きく上回る資金が国際金融市場に放出され、これが「国際金融市場主導型の、弱肉強食的資本主義」を助長し、実体経済を翻弄していると見る私にとって、マハティール首相のこうした提言は極めてリーズナブルなものと感じます。
そして私は、こうしたマハティール首相案に、私の持論である「人々が生きて行く為に必要なものやサービス、特に、水、食糧、原材料、エネルギーなどに関する特定商品、特定サービスに対しては、実需原則を敷き、膨らんでいる国際金融市場からの投機性資金の流入を防ぐべきである」と考えています。とにかく、国際金融に実体経済が翻弄される現状をいち早く脱しないと、「持つ者と持たざる者の格差は是正しない、それどころか、拡大する可能性の方が高い。従って、世界に広がる、混沌の遠因は是正されない」と私は考えています。
尚、上述したマハティール首相を擁するマレーシアに対して、米国政府は、5月28日に公表した為替報告で、通貨政策を注視する監視対象国にマレーシアを加えています。今後の動向をフォローしつつ、マハティール首相の提言に応じる国が増えていくことを私は個人的には大いに期待しています。
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