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2019-02-26 20:03
「統一朝鮮」は実現しない
加藤 成一
元弁護士
2017年の韓国文在寅政権の成立後、2018年には同大統領と北朝鮮金正恩朝鮮労働党委員長との3回に及ぶ南北首脳会談、そして同年6月には北朝鮮の非核化をめぐり、シンガポールでの史上初のトランプ米国大統領と金委員長との米朝首脳会談を経て、南北間及び米朝間の緊張は明らかに緩和した。2月27日及び28日にはベトナム、ハノイでの2回目の米朝首脳会談が行われ、一部では終戦宣言に向かう可能性も指摘されている。確かに、1回目の米朝首脳会談後も特段非核化の進展は見られないが、北朝鮮による弾道ミサイル発射実験や核実験が行われていないのは、トランプ大統領による対北朝鮮外交の一定の成果と言えよう。
こうした一連の経過を見ると、北朝鮮はもはや簡単には後戻りができない状況に置かれつつあると言えようが、北朝鮮が最終的に核やミサイルを完全に放棄することはあり得ないであろう。なぜなら、1950年に多大の犠牲を払い「統一朝鮮」(韓国武力併合)を目指して朝鮮戦争を引き起こした金日成主席以来の北朝鮮の究極の目的は、今も北朝鮮の主導による「統一朝鮮」の実現であり、そのためには韓国の50分の1程度の経済力しかない北朝鮮にとって、核保有は脆弱な経済力を補って余りある唯一の力だからである。核を放棄した北朝鮮には韓国に勝るものは何一つなく、「統一朝鮮」の実現について主導権を握ることなど到底不可能であることは明らかである。
このように、北朝鮮にとっては核保有が主導的な「統一朝鮮」実現のために必要不可欠な唯一の手段であるから、北朝鮮が自発的に核を放棄し逆に韓国に併合される形で「統一朝鮮」の実現に協力することはあり得ない。なぜなら、そのことは建国以来の北朝鮮の国是である「共産主義」(主体思想)及び朝鮮労働党の独裁を放棄することを意味し、金日成以来3代続く金正恩政権自体の正統性を否定することになるからである。まさに金正恩政権の「自殺行為」に他ならない。したがって、この点において「統一朝鮮」の実現は到底あり得ないのである。東西ドイツの統一は、ソ連の崩壊に先立つ東ドイツでの民主化運動が重要な要因であるが、南北朝鮮とは根本的に異なる。恐怖政治の下にある北朝鮮での民主化運動は到底期待できない。民主化は金正恩体制の終焉を意味するからである。
1980年に北朝鮮の金日成主席は、当時の韓国の全政権に対して、一民族、一国家、二制度、二政府の下での「高麗民主連邦共和国構想」を主張した。これは、韓国の経済が発展し、北朝鮮が武力(通常戦力)で韓国を併合する可能性が低下したために提唱したものと考えられる。しかし、北朝鮮側が、韓国側に国家保安法撤廃、共産主義政党結成の容認、在韓米軍撤退などを求めたため、韓国側は受け入れなかった。この教訓から言えることは、「統一朝鮮」は北朝鮮側が「共産主義」(主体思想)を捨て、朝鮮労働党一党独裁を廃止し、金正恩政権が終焉し、核を放棄して、韓国側に併合されない限り到底実現不可能だということである。したがって、日本としては、到底実現不可能な「統一朝鮮」を恐れる必要は全くないのである。
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