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2007-04-24 06:40
中国経済における個人消費活性化の課題
村上正泰
日本国際フォーラム研究主幹
さる4月19日に発表されたところによれば、中国の今年1-3月期の実質経済成長率は対前年同期比11.1%という高い伸び率であった。中国における景気過熱感が再び高まりつつあるが、中国経済の将来は中国自身のみならずアジアを中心に世界全体に大きな影響を及ぼす問題であり、我々としても十分注視していく必要がある。経済の過熱がもたらす問題は中国政府も十分認識しており、温家宝首相は全人代において8%前後の安定成長を目指す旨を表明し、「和諧社会」(調和のとれた社会)の実現に向けて、さまざまな政策が検討されている。しかしながら、足元の統計を見る限り、投資は再び大幅増に転じ、とくに不動産バブルの懸念が強まっている。
この背景には、中央政府の方針に反して、地方政府が引き続き積極的に投資プロジェクトを推進している影響がある。また、貿易黒字も大幅な増加を記録しており、中国の経済成長は投資・外需主導で進んでいるといえる。中国経済の不均衡といった場合、都市と農村の格差がまず思い浮かぶけれども、マクロ経済的にみると、GDPに占める個人消費の割合が低く、いびつな経済構造をしているという問題がある。中国経済の「調和ある発展」のためには、投資・外需主導から消費主導への転換が不可欠である。
経済学者の齊藤誠氏は近著『成長信仰の桎梏 消費重視のマクロ経済学』において、我が国における高水準で安定した消費を享受できるようなマクロ経済環境の必要性を主張している。そして、設備投資を基軸にGDPを押し上げようとすると、資本の過剰蓄積を促し、資産価格バブルの生成と崩壊をもたらす点を警告している。これは決して我が国のためだけの話ではなく、まさに現在の中国にも当てはまる話である。
それではどのようにすれば個人消費を活性化できるのかといえば、これがなかなか難しく、即効策はないのである。たとえば、中国においては、中長期的に少子高齢化の進展が見込まれるなかで、社会保障制度の未整備が大きな問題となっているが、財政的圧力とバランスをとりながら持続可能な社会保障制度を構築していくことは不可欠であり、それは個人消費の活性化にもつながるであろう。そのほかにも税制などにおいてもさまざまな改革を積み重ねていく必要がある。
中国経済の問題点を指摘することは得てして悲観論に結びつきやすいが、もし中国経済が崩壊すれば、それは我が国にとっても他人事ではないし、アジア域内に甚大な影響を及ぼすことは必至である。我が国がなすべきは、ただ単に中国経済の脆弱性を指摘するというのではなく、それが現実のものとならないよう、中国とのあいだでマクロ経済運営に関するサーベイランスを強化していくことであろう。
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