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2007-04-20 06:09
温家宝首相の訪日と東アジア共同体の構築
石垣泰司
東海大学法科大学院教授
今般の温家宝首相の訪日は、安倍総理の昨年10月の訪中以後好転した日中関係の一層の改善に向け重要な訪問であったが、東アジア共同体構築の関連でも意味のある訪問であった。温家宝首相は、ASEAN+3のサミットに一貫して中国を代表して出席しているASEAN+3会合の常連であり、東アジア地域協力の強い支持者として知られる。従って、日中二国間関係の「氷を溶かす」ためと銘打った今回の訪日中、東アジア地域協力についても触れられるかどうか、触れられる場合どのような表現となるか興味あるところであった。
首脳会談の後発表された共同プレス発表によれば、まず「戦略的互恵関係」の基本精神として、冒頭「日中両国が、アジア及び世界の平和、安定及び発展に対して共に建設的な貢献を行う」と謳い、「戦略的互恵関係」の基本的内容の第五項目で「協調と協力を強化し、地域及び地球規模の課題に共に対応する」、「ASEANが東アジアの地域協力において重要な役割を果たすことを支持し、共に開放性、透明性、包含性の三つの原則の基礎の上に東アジアにおける地域協力を促進する」と明記し、かなり突っ込んだ内容のものとなっている。温家宝首相の国会演説の中でも、「中日両国は(中略)協調と協力を強化し、ともに(中略)東アジアの地域協力のプロセスを推進して、アジアの振興に取り組む必要があります」と中国としての基本姿勢を明らかにしている。
もとより、これらの表現のみで多くを期待することは尚早であるが、これまでASEAN+3諸会合で、靖国問題等による日中関係の悪化を憂慮し、これが東アジア共同体をはじめとする東アジア地域協力にも悪影響を及ぼしていることが再三表明され、多くの諸国から両国に対し早急な改善努力が呼びかけられていたことを考えれば、今回、日中両国の関係改善、東アジア地域協力への日中の「協調と協力」を強調したことは、対外的に大きな意味があったといえるであろう。しかも、今後の東アジア共同体構築をめぐる論議・諸作業を進めていく上で、ASEAN+3枠組みにおける日中両国の役割が益々重要となることに鑑み(07.02.23本欄拙稿「定着しつつあるAPT主導の東アジア共同体構築路線」ご参照)、さらに意味を持つこととなる。
これからのASEAN+3プロセスの中で、日中協力の精神がどのように具体化され、安倍総理の年内の訪中、その後に見込まれる胡錦涛主席の訪日の機会に、このモメンタムをさらに持続していくことができるかどうかを注目して行きたい。
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