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2018-07-05 19:39
「イージス・アショア」は日本の抑止力強化に不可欠
加藤 成一
元弁護士
日本政府は2017年12月19日閣議決定した地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の導入につき、秋田県と山口県の自衛隊演習場に配備する計画を推進している。日米が共同開発中の射程2000キロ、迎撃高度1000キロの新型迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」搭載可能「イージス・アショア」は、24時間365日大気圏外を飛行する高速の弾道ミサイルを追跡する高性能レーダーと日本国内に向かってきたミサイルを撃ち落とす迎撃ミサイルからなる。海上に展開するイージス艦と比べて地上配備型であるため補給や整備が容易で、切れ目のない監視態勢を維持できるメリットがある。一基1000億円、二基で2000憶円とされるが、高性能レーダーのため二基で日本全土をカバーできる。米国ハワイに「イージス・アショア」による迎撃ミサイル実験施設があるが、米国の迎撃実験では一定の有効性が確認され、さらなる技術開発が進められている。
これにより、海上配備型イージス艦、地上配備型「イージス・アショア」、地上配備型弾道ミサイル迎撃システム「PAC3」による三段構えで、日本全土をミサイル攻撃から防御するミサイル防衛体制が一層強化される。「イージス・アショア」は、NATO(北大西洋条約機構)のミサイル防衛の一環として既にルーマニアとポーランドに配備されている。イランの弾道ミサイルを対象とするとされているが、ロシアは自国を対象としたものであると非難している。日本に「イージス・アショア」二基が配備されれば、現在展開中の海上配備型イージス艦六隻との連携による補完的重層的な対応も可能となり、弾道ミサイルに対する追跡能力が向上し、カバーできる迎撃範囲が拡大する。迎撃ミサイルの絶対数も増加し、したがって対処できる弾道ミサイルの数も増え、日本の抑止力強化に有益である。配備費用二千億円は、一億二千七百万人の日本国民の命と国の存立を守るための追加コストとして過大とは言えないであろう。
しかるに、早くも、共産党などの一部野党や朝日新聞などの一部マスコミは、最近の米朝首脳会談などによる朝鮮半島の緊張緩和ムードを理由として、「イージス・アショア」の配備に反対ないし再考を主張している。しかし、日本の防衛力の整備と抑止力の強化は目先の現象や情勢に左右されてはならず、中長期的な視点からの万全の対応が不可欠である。朝鮮半島の「非核化」についてもいまだ不確実な要素が多いうえ、今後の「非核化」交渉の成り行き次第では再び米朝の緊張が激化し、したがって朝鮮半島の緊張が再び高まる事態も想定しておかねばならない。
のみならず、「イージス・アショア」の配備は、何も北朝鮮だけを対象とするものではない。急速に軍備を拡大して南シナ海の人工島を軍事基地化し、尖閣・沖縄を含む東シナ海及び西太平洋の制海権を狙う中国の覇権主義的な海洋進出は看過できない。尖閣諸島及び沖縄防衛のためにも、中国の弾道ミサイル攻撃や、巡航ミサイル攻撃などに対する「イージス・アショア」による迎撃能力の強化は必要不可欠である。ロシアは配備に反対の意思を表明しているが、これは攻撃用ミサイル発射も可能であることを含め「イージス・アショア」の有効性を認め、抑止力強化を懸念するからである。なお、レーダーが発する電磁波による影響や、攻撃対象になるとの懸念が指摘されるが、前者は住宅地との一定の距離を確保することや、レーダーの発射角度などにより技術的対処が可能であり、後者は「イージス・アショア」の配備により日本の抑止力自体が強化されるから、むしろ攻撃そのものを防止することになる。「イージス・アショア」は、是非はともあれ「専守防衛」を国是とする日本にとっては、防御システムとして弾道ミサイル攻撃に対する抑止力強化のために必要不可欠であり、速やかな配備と運用が望まれるのである。
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