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2018-07-04 22:10
アジア歴史戦からみる北朝鮮外交
岡本 裕明
海外事業経営者
歴史的会談と言われたシンガポールでの米朝首脳会談からほぼ3週間が経ちます。メディアは会談そのものをイベントとしてとらえましたが、その意義の分析と経過を追った報道は割と限られるように感じます。一時、日本側が日朝首脳会談も模索していると報じられましたが、北朝鮮側からは冷や水を浴びせられています。政府の対北朝鮮政策の姿勢を考えてみたいと思います。安倍首相は拉致問題を一つの政治課題とし、場合によってはそれを選挙対策にしようと考えたかもしれません。しかし、私は以前から「別に今、(金正恩委員長に)会わなくてもいいじゃないか」との意見です。それはいわゆるアジアの歴史戦について長いこと、掘り下げて見てきた中で北朝鮮の態度はそんな生ぬるいものではないと考えているからです。
いわゆる歴史戦といえば慰安婦像であったり南京事件が主テーマであったりするのですが、北朝鮮関連については歴史的にほぼ没交渉であったため、あまり案件が上がってきていません。ご存知の通り、慰安婦問題や南京事件が一般の人に広く知らしめる形で現在まで引っ張るようになったのは日本側のトリガー、つまり朝日新聞の報道に大きな要因があります。慰安婦問題に関する朝日新聞の関与は広く知られています。では南京事件と朝日新聞の関係ですが、案外、知られていないかもしれません。これは昭和46年に連載された同社のスター記者、本田勝一氏が書いた「中国の旅」で南京事件の残虐さを報道したことに大きな反響があったことは着目すべき点です。そしてその内容には大きな疑問がつけられているのですが、本田氏はその記事の内容についてコメントを控えたという事実があります。なぜか、という話はいろいろ取りざたされているようですが、その前年に同社社長の広岡和男氏が1か月にわたり訪中、周恩来首相(当時)とも会談しています。日中国交回復が昭和47年でその下地作りのため、日本の報道関係は中国に不利にならないこと(つまり悪口)を書かないという規制ラインがあったのですが、最後に中国と連係プレーをしたのは朝日だったということです。そしてその使命を受けたのが本田氏で「中国の旅」の記事取材が行われています。
そう考えると歴史戦のきっかけを作ったそれら二つの問題は日本側報道にあったともいえますが、北朝鮮についてはさすが、今のところ奇妙な話題が上がってきていない状況にあります。そんな中、心配なことは北朝鮮側があることないこと、様々報じる可能性でそれを日本側が衝撃的な報道として捉えるリスクに十分気を付けなくてはいけません。もう一つは北朝鮮から歴史的問題の清算を突き付けられる公算であります。つまり、トランプ大統領の米朝対話ラインに日本が自然に乗せられ、拉致問題が180度ひっくり返り、思わぬ展開になるというシナリオです。ずいぶん昔、ある駐米大使が「日本にとって最大の外交的悪夢は、日本の知らない間に頭越しに米中両国が手を握る状態が訪れることだ。」と述べ、実際にそれが米中国交回復の過程で起きました。米朝でもそんなことが起きた場合、日本の外交方針が骨抜きになることが懸念されます。
昨年、安倍首相は慰安婦問題が釜山で再燃した際、断固たる態度を取りました。支払った10億円の強みです。世界のウィットネスもありました。今回、安倍首相が取るべきは拉致問題の解決がなければ一切の経済復興支援は行わないというぶれない姿勢でありましょう。安倍首相がトランプ大統領とディールのイニシアティブを取るぐらいのスタンスでないと北朝鮮外交は非常に混迷の度合いを深めるかもしれません。歴史問題を後世に残さない、とするならばここできちんと形作らないと100年たっても怨嗟の声が響き、中国、韓国がそれに同調しかねません。
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