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2018-05-31 10:44
不十分な日本の対北朝鮮外交
岡本 裕明
海外事業経営者
皆さんが、普段あまり口を利かない相手からお願い事をされたらどうでしょうか?多くの日本人は即座に断るはずです。理由は「よく知らない人からそんなこと言われても…」であります。では、あなたが嫌いな人から「実は今日はお願いがあって…」と畏まって言われたらどうでしょうか?「お前、何言ってんの?」というはずです。つまり、心の中にふざけるな、都合の良い時だけ猫なで声を出すのか!だろうと思います。これが面白いもので、海外だとディール次第ではどんな嫌いな相手でもひょいとまとまることはよくあります。「取引」というのは感情論を極力抜きにしたテーブル上で、自分と相手の双方に利があるウィンーウィンな落としどころをつくることであります。
日本の北朝鮮への姿勢は基本的に拉致問題、核問題が主だと思います。拉致問題はメディアで何年にもわたって報じ続けているため、日本人の心に深く刷り込みがあります。核問題は当然ながら日本にもその脅威が及ぶことで、安倍首相が絶対条件の一つに掲げています。それ以外については基本的に国交がなく、国民に直接影響がある事象も少ないため、見聞きした中で「嫌なイメージを持つ国」という主観的判断が主体だと思います。表面的にはわかりにくいですが、北朝鮮と深くかかわりがあるとされるパチンコ業界や一部の娯楽、エンタテイメント業界には日本人は喜んでお金を消費しています。そこまで嫌ならボイコットすればいいと思うのですが、「それとこれとは別」であります。
外交とは、交わることで取引をすることです。多くの方は何も思わなかったかもしれませんが、安倍首相は日朝直接会談のために韓国、文大統領の仲介オファーに対して礼を述べています。あるいはトランプ大統領の金正恩委員長との会談で拉致問題を取り上げてもらうよう安倍首相がお願いしています。つまり、日本には北朝鮮と交渉するルートすらないのが現状であります。理由は、日本の北朝鮮に対する外交スタンスが「拉致、核をどうにかするまで交渉テーブルにつかない」というスタンスにあるからです。これは国会で野党がモリカケ日報問題が全て明快になるまで国会審議に協力しないというのとまったく同じ構図です。私は先日、野党のこの姿勢に痛烈な批判をし、びっくりするほど多くの方の賛同のボイスを頂きました。ではこれが北朝鮮相手だとどうでしょうか?取引とは唐突にビジネスディールを持ち出すことではありません。日々積み上げの営業活動から双方の信頼関係を作り出します。飯を食い、酒を飲み、小さいディールをいくつかこなして双方の真意や熱意を見出し、取引を発展させていきます。国家間の取引になると基本的には上下の関係はありません。双方対等な立場であり、ギブアンドテイクの中で取引は決まります。
ではお前は北朝鮮に譲歩するのか、と思われるでしょう。それは全く違います。拉致問題、核問題を解決するために相手の引き出しを探るしかないのです。数年前、日中韓関係が最悪になった時、オバマ大統領が仲介に入り、氷解したことがあります。その時もお互いが意地の張り合いで高い壁を作っただけの問題で意を決してテーブルに着いたら徐々にわだかまりが取れたという経緯がありました。日本は文大統領が政権を取れば日本にとって不利になる、あるいは安倍首相にとってやりにくい相手になる、と言われ続けました。が、実際には文大統領にお願いすらする事態になっているのは、日本の北朝鮮外交が全く機能していないことを露呈したようなものでしょう。日本では「弱腰外交」を嫌う傾向がありますが、「交渉巧者」になることが重要です。この二つは似て異なるものです。安倍首相は野党の給与泥棒とはレベルが違うはずですから、ここは北朝鮮が日本と取引をしたくなる「匂い」で「うまくやった」と言わせる大挽回策を取っていただきたいところであります。
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