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2018-04-27 23:08
好材料がない日中関係改善への違和感
倉西 雅子
政治学者
8年ぶりとされる日中経済対話の再開に対するマスメディアの一般的な風潮は歓迎ムードです。しかしながら、4月17日付の日経新聞朝刊に掲載された幾つかの記事を読み合わせますと、日中関係の危うさの方が逆に浮かび上がってきます。その危うさとは、政経両面に及ぶ深刻なものです。中国が日本国に急接近してきた背景には、深刻さを増す米中対立があることは既に多くの識者が指摘しております。仮に、アメリカの保護貿易主義によって中国が自国製品の輸出市場や投資先を失うとしますと、中国は、その損失を世界第3位の日本国との関係強化で埋め合わせようとすることでしょう。しかしながら、日中経済対話で日本国側が改善を要請したように(第1面と3面)、日本国もまた、アメリカと同様に対中貿易では赤字国であり、自由貿易を無条件に礼賛できる立場には最早ありません。同会談では、両国は自由貿易の堅持で一致したとされていますが、日本国が立場を共有しているのは、むしろ、アメリカの方です。
一方、第1面のメイン記事として掲載されたのは、“資本関係見直し検討 日産・ルノー22年めど”です。行き過ぎた自由貿易、あるいは、グローバリズムの観点から、日本国の将来を暗示しているのは、日産・ルノー関係の見直しです。日産自動車と仏ルノーの会長を兼任しているカルロス・ゴーン氏は、自らの退任後も両者の関係が維持されるよう、経営統合計画を検討しているそうです。その背景には、フランスのマクロン政権の意向が働いているとされており、いわば、政府主導型での統合計画と言えます。日仏両国とも自由主義国ですので日産・ルノー関係では政府の存在はそれ程強くは意識されていませんが、こうしたケースは、中国企業との間でもあり得ます。中国企業は、中国共産党のコントロール下にあり、日本経済は、企業支配を介して中華経済圏、否、中国共産党の政治的支配網に絡め捕られる可能性は否定できないのです。
そして、同紙第9面では、“米、海外企業の投資制限”と題する記事を読むことができます。同記事は、アメリカでは、中国による米企業の支配や中国への技術流出を警戒し、対外外国投資委員会が(CFIUS)が少額出資や合併等にも審査の対象を広げたことを伝えています。トランプ政権の発足当初は、中国による対米投資を歓迎しておりましたが、中国の覇権主義的行動と米中関係の冷却化が相まって、今に至り、海外からの投資を厳格化する方向に政策転換を見せているのです。この記事は、米国から締め出されたチャイナ・マネーが日本企業のM&Aに向かう可能性を示すとともに、日本国政府の中国に対する無警戒ぶりが際立ちます。
以上に述べたように、日本国は、経済的立場においてアメリカと共通部分が多いにも拘わらず、何故か、中国に靡くという極めて不自然、かつ、非合理的な行動を見せています。今では、日本国の経団連や企業経営者でさえ、中国が必然的に勝者として君臨するような自由貿易主義にはもろ手を挙げて賛成してはいないのではないでしょうか。中国が日本国に期待しているのは、先端技術の中国への移転、一帯一路構想への財政的貢献、中国製品の輸出市場並びにチャイナ・マネーの投資先、自国に有利となる自由貿易体制堅持のための対米共闘(政治的には日米離反…)、中国共産党ネットワークの対日拡大、及び、失業対策としての中国移民の受け入れ等であり、互恵とは程遠く、自国のために日本国を利用、あるいは、支配しようとしているに過ぎないように思えます。しかも、中国が軍事大国としてその牙を露わにしている以上、日中間で相互依存関係を進化させることは安全保障において危険でさえあります。シリア空爆や北朝鮮危機に際しての中国の態度を考慮すれば、日中間には関係を敢えて改善させる好材料は皆無に等しく、日本国政府は、両国間の関係については抜本的な見直しこそ図るべきではないかと思うのです。
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