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2007-02-24 12:03
求められる幅広い領域の専門家の参加
園田茂人
早稲田大学大学院教授
東アジア共同体やアジアの地域統合に関する論議が、深まりを見せている。環境保護や感染症対策、歴史認識から政治・経済制度の共有に至るまで、具体的な問題解決とその制度的対応に議論の射程が拡がってきているからだ。「人間の安全保障」と総称される領域にまで議論の対象が拡がっていることは、地域統合の意義を確認しあい、実効性の高い政策を構築するという点からも望ましいことだと思う。
ところが、その論議に参加しているのは国際政治や国際経済に関心を抱く研究者や実務家が圧倒的で、それ以上の拡がりには欠けているようだ。私が専門としている社会学や人類学の領域で、東アジア共同体の議論に参加している日本人研究者は、残念ながらほとんどいない。もちろん、国際情勢、とりわけアジアの政治経済に無関心な人間の「想像力の欠如」といった原因もがあるだろう。また、議論が制度構築のレベルにとどまっており、その実行可能性にまで落とし込んだ議論になっていないといった背景もあるだろう。
しかし、社会学でいうところの「中範囲の理論」が存在せず、抽象度の高いマクロな制度設計の議論と、個別の問題解決といったミクロな議論が、しばしば遊離している現実も急いで指摘しておかなければならない。あるいは、現実には「特定の価値を前提とした制度構築」しか議論しえず、社会や文化といった概念は、共同体論議の中の「黒い羊」になっているのかもしれない。政治経済以外の領域に関連する人々が共同体論争に参加するには、より具体的なアジェンダが必要だ。アジアの多元的価値にどう向き合うか、アジアの市民性をいかに涵養するかといったテーマが、今後東アジア共同体の議論で一定の位置を占めるようになることを望みたい。
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