ホーム
新規
投稿
検索
検索
お問合わせ
2017-07-18 19:54
トランプ氏の切り札は「中国超メガバンク」制裁
田村 秀男
ジャーナリスト
核・ミサイル開発で挑発を繰り返す北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長。トランプ米大統領は4日の弾道ミサイル発射について、大統領得意のツイッターでも「たぶん中国が重く動いてこのばかげた行動を終わらせるだろう」と発信した。トランプ氏は中国の習近平国家主席からは裏切られっ放しなのだが、今度ばかりは何やら確信ありげである。本当にそうなるのか。伏線は、6月末に米財務省が発表した中国の丹東銀行への金融制裁である。中朝国境の遼寧省丹東市にあるこの銀行は北の核・ミサイル開発を金融面で手助けしたという。ドル取引が禁じられ、国際金融市場から締め出される。
米国が北朝鮮関連で中国の金融機関を制裁対象にしたのは初めてだが、中国側の反応は抑制気味だ。「他国が自身の国内法に基づき、中国の企業や個人を統制することに反対する。米国側が直ちに誤りを是正するように求める」(6月30日、中国外務省の陸慷報道官)と、反発も紋切り型だ。ワシントン筋から聞いたのだが、米側は丹東銀行について、事前に中国側と打ち合わせしたうえで「制裁」を発表した。当然、丹東銀行が米側の容疑対象であることを中国側は事前に察知しており、米側制裁に伴う混乱を回避する対応措置を取っている。
混乱とは、丹東銀行への信用不安から預金者による取り付け騒ぎが起きることなどだ。もとより、丹東銀行のような地域に限定された小規模な金融機関なら、カネを支配する党の手で信用パニックの防止は容易だ。丹東銀行制裁は米中の出来レースなのだろう。そんな現実なのに、中国がトランプ氏のつぶやき通り「重く動く」だろうか。トランプ政権は制裁の切り札を温存している。中国の4大国有商業銀行の一角を占める中国銀行である。米ウォールストリート・ジャーナル紙によれば、国連の専門家会議も、中国銀行のシンガポール支店が北朝鮮の複数団体向けに605件の決済を処理していたことを把握している。今年2月には米上院議員有志が、中国銀行が北の大量破壊兵器開発に資金協力してきたと、ムニューシン財務長官に制裁を求めた。
米財務省は言われるまでもなく、オバマ前政権の時代から中国銀行の北朝鮮関連の資金洗浄を調べ上げてきたが、何しろ相手は資産規模で世界第4位、三菱東京UFJ銀行の1・5倍、米シティバンクの2倍もある超メガバンクで、国際金融市場で中国を代表する。制裁対象になれば、米金融機関ばかりでなく外国の金融機関とのドル取引が禁じられる。中国側の反発の激しさはもちろん、国際金融市場への波乱は丹東銀行の比どころではない。米外交専門誌「フォーリン・ポリシー」によれば、オバマ前政権時代でも中国銀行は俎上にのぼったが、金融市場への影響や中国との関係悪化などの事態に対応準備ができない、ということで、おとがめなし。ビビったのだ。トランプ政権はどうするか。
>>>この投稿にコメントする
修正する
投稿履歴
一覧へ戻る
総論稿数:4661本
東アジア共同体評議会