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2017-04-02 12:21
韓国への報復措置からみる対中経済依存のリスク
倉西 雅子
政治学者
THAADの韓国への配備に対して強硬に反対を主張してきた中国は、経済分野において矢継ぎ早に韓国に対する報復措置を打ち出しています。統計によると、韓国の最大貿易相手国は中国であり、2016年の対中輸出額は14兆3100億円にも上るそうです。この額、対日輸出額の5倍に当たり、対米輸出額と比較しても2倍ですので、中国による対韓報復措置は、韓国経済に深刻な打撃をあたえることは必至です。
共産主義体制では、政治と経済は不可分に結びつきますので、中国による政治的な理由に因る経済制裁は、当然に予測されることなのですが、北朝鮮の動きを見ておりますと、THAAD配備反対のみが目的ではないように思えます。本日も、高出力ロケットエンジンの実験成功が報じられており、先日の金正男氏の暗殺事件と言い、北朝鮮の動きが頓に活発化してきています。臨戦態勢に入っている気配もあり、朝鮮半島有事も現実味を帯びています。
対北制裁に対する消極性からも推測されるように、仮に中国が裏においては北朝鮮の金正恩政権を支えているとしますと、北朝鮮による軍事侵攻に備えて友邦である北朝鮮に有利な状況を作出しようとするはずです。中朝両国間には、1961年7月11日に中朝友好協力相互援助条約が締結されており、2001年の第3回目の更新により2021年までは、一先ずは有効期間とされています。もっとも、同条約は、防衛目的に限定されていますし、国際法の違反行為に対する制裁には適用されないかもしれません。同条約の発動の如何は不明ですが、中国には、同陣営として北朝鮮を政治的に支援する理由があるのです。
THAAD配備に関しては、中国は、反対理由として自国も監視対象となる点を挙げていますが、対韓経済報復の背景は、韓国経済を混乱に陥れ、かつ、その経済力を削ぐことで、同盟国である北朝鮮を支援する狙いがあるかもしれません。経済分野に限らず、政治分野においても、朴大統領の弾劾と大統領選挙の実施に伴う混乱にも、中国の思惑が隠れている可能性もあります。今般の一連の動きは、朝鮮半島有事を想定した中国が、既に準備段階に入っているのではないかとする疑いを強めます。そして、日米をはじめ、中国と対立する諸国は、中国への経済的依存が、中国に報復、即ち、敵地攪乱手段を握られることを意味することを理解する必要があるのではないかと思うのです。
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