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2017-02-16 06:19
中韓、安倍訪米で牽強付会の論調
杉浦 正章
政治評論家
どうして中韓両国の論調はかくまでも牽強付会なのであろうか。日米首脳会談をめぐるメディアの論説が2月15日までに出そろったが、世論を誘導するマスコミが道理をねじ曲げ、都合の良いように理屈を無理にこじつけている。中国が首相・安倍晋三の訪米を「朝貢外交」と決めつければ、韓国の場合はひがみ根性丸出しの論調すらある。中国の論調は誤解、誤認の山だ。これら感情丸出しの論調がいかに自国の民度を低く押し下げているかが分かっていない。
まず公的な見解を披露すれば、中国外務省の耿爽・副報道局長は13日の定例会見で、トランプが尖閣諸島を日米安全保障条約第5条の適用対象だと確認したことに対し、「誰が何を言おうと、何をしようと、釣魚島が中国のものだという事実は変えられない。国家主権と領土を守るという中国の意志と決心を動揺させることもできない」と全面否定。「日本が不法な領土を主張し、安保条約を名目に米国を抱き込むことに反対する」と言い切った。東シナ海で古来実効支配もしていない島々を自分のものだと主張し、虎視眈々(こしたんたん)と領土・領海を広げようとする自らの主張を棚上げにして、よく言えたものである。中国共産党機関誌人民日報のニュースサイト人民網は15日、「まるで朝貢外交?安倍首相の訪米、経済面で譲歩」との見出しで、「首脳会談の結果、安倍首相は今回の訪問の核心的な目的を達成したようにみえ、米日同盟が変化するのではないかとの外部の懸念をある程度払拭することができた。だが実際の得失を考えると、安倍首相の今回の訪米で採用したまるで『朝貢』のような外交政策は、日本国内からの批判にさらされてもいる」との分析を掲載している。
まず「よく言うよ」と言いたいのは、「朝貢外交」論だ。筆者は2014年の中国におけるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の際、習近平が各国首脳を出迎える姿を「APEC史上見たこともない、けばけばしい朝貢外交的な演出は国内対策である」と看破したが、「朝貢」とは中国王朝時代に外国人が来朝して、皇帝に三拝九拝して貢ぎ物を奉ることであり、共産党一党独裁国家にはあり得ても、民主主義国間ではあり得ないことである。トランプは自動車も為替も言及はなく、日本側も提示しなかった。問題は日米の「枠組み」に先送りされたのであり、事実誤認も甚だしい。さらに「日本国内からの批判にさらされてもいる」との指摘は全く当たらない。その証拠に共同通信の調査によれば、日米首脳会談を「よかった」と評価する回答が70.2%、「よくなかった」は19.5%だった。内閣支持率も前回1月より2.1ポイント増えて61.7%となっている。こんな批判のない首脳会談は佐藤・ニクソンの沖縄返還実現会談以来のことである。
さらに人民網は2月14日「同盟関係を盲信、日本は道を誤った」と題して「在日米軍の駐留経費の負担問題はひとまず話題に上らなかったが、トランプ大統領は日本に負担増を求めることを示唆しており、日本を含め同盟国が負担を求められることは確実だ」と大きく誤報している。なぜ誤報かと言えば、トランプは駐留費問題に関して日本が75%を負担していることを指して「我々の軍隊を受け入れてくれる日本国民に感謝したい」と述べている。米国はさっそく日本の高負担を参考に北大西洋条約機構(NATO)にも負担増を求めている。米国防長官マティスは15日からのNATO国防相理事会に出席、負担問題を協議する。事前の根回しでNATO諸国は国防支出拡大に応える方針だ。日本にこれ以上の負担増を求めるというのは誤報だ。
一方、韓国は、朝鮮日報が「北ミサイル発射に米日が蜜月演出、韓国は置いてけぼり」と社説で嘆いた。ミサイル発射と同時に安倍とトランプが共同記者会見に臨んだことについて「トランプ大統領の安倍首相に対する際だった配慮と二人の緊密な関係を目の当たりにするとき、本来韓半島(朝鮮半島)でわれわれが当事者のはずの一連の問題がどこか他人ごとのようにも感じられる。それはわれわれにとってより心配すべきことかもしれない」と論じた。これも偏狭なる“ひがみ”の分析である。そもそも朝鮮半島の防衛は「日米蜜月」があってこそ成り立つ問題である。日米どちらが欠けても成り立たない構図であることが分かっていない。韓国は「置いてけぼり」と嘆く筋合いではない。この点、中央日報は大人の論調を掲げている。社説は「安倍首相の対米外交をめぐる解釈が分かれている。『朝貢外交』やら『屈従外交』やらと批判する面々があるかと思えば、『実利外交」とは何かを見せてくれた』という評価もある」と韓国内の空気を正直に書いている。そして「韓国の大統領が安倍首相のようにしたら、どのように評価されただろうか。屈辱外交などとさんざん非難を浴びたかもしれない。名分に捕われて外交の基本も逃してしまうのではないか、考える時だ」と結んでいる。韓国も同様の外交をしなければならない、と言いたいのだ。しかし、誰が大統領になっても「安倍外交」ほどの成果を上げあれるかは別だが、まずは釜山の慰安婦像撤去から始めることが外交成果へのカギと心得るべきであろう。
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