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2017-01-17 05:51
“真剣”抜いた「小池正雪」に自民の優柔不断
杉浦 正章
政治評論家
「女由井正雪の変」(自民党幹部)が発生しているのにもかかわらず、安倍徳川幕藩体制は太平の夢をむさぼっているかのようである。安泰政権4年で平和ぼけしているかのようだ。自民党都議に刺客を擁立すると小池正雪が公言して、挑発しているのに、ただひたすら「穏便に」と低姿勢で、「何とかまるくことを納める方策は無いか」と松の廊下を右往左往している。自民党都連は、優柔不断を絵に描いたような存在になりつつある。「目を覚ませ」と言いたい。小池百合子は真剣を抜いているのだ。小池の都議会自民党に対する怨念はただ事ではない。小池戦略は、豊洲市場の有害物質を天佑の選挙テーマに据えて、自民党都政の責任を問う形だ。難破船からネズミが逃げ出すように、会派を別にした3人をのぞく自民党54人の選挙区が、小池の擁立する候補に火の海とされる。しまいには江戸城本丸に火をかけられかねない状況に至っている。
16日のNHKで小池は有害物質の検出について「いったい何なんだろう。とても不可解に思っている」と言明、これまでの調査が「疑惑の調査」であるかのような口ぶりであった。突然ベンゼンが79倍、シアンが初めて検出という事態は、業者が変わって初めて出てきた数字だ。豊洲市場の汚染問題は新局面を迎えたのだ。市場関係者だけでなく、検証する専門家会議、そして小池自身にとっても、想定外の事態となった。これまでは基準値すれすれだったものが、業者が変わるとこれほど変化するものなのだろうか。ただでさえ一部販売が開始されている豊洲市場には客足が閑散、汚染が想像を絶する高倍率とあっては、もう豊洲市場は成り立たないのではないか。市場関係者が安心して生鮮食品を売り買いできる数字ではない。再調査を行うが、今後、移転断念論が強まる可能性がある。小池はこの状況を喜々として“活用”しようとしている。豊洲市場は、2004年の「豊洲新市場基本計画」から始まって、一から十まで石原慎太郎の在任中にやったことである。小池は、石原と、これと組んだ都議会自民党による移転推進を正面から突く材料を入手したことになる。小池は「豊洲市場のあり方が大きな争点になるべきだ」と発言し、都議選を待たずに千代田区長選から選挙の最大の争点として持ち出す構えだ。都議会自民党は弱り目に祟り目の窮地に追い込まれつつある。
これまでも、小池はかさにかかって挑発している。「都議選に立候補するに当たって進退伺いを預けている。首を切る切らないはあちらの問題」と開き直り、「どうぞお決めになれば」と、まるで歌舞伎で口論の末に、「さあさあさあ」と調子を高めていくかのような土壇場に自民党を追い詰めている。これに対して都連会長下村博文は「石原(伸晃)前会長から進退伺いの引き継ぎがあったわけではない」などと、理由にならないことを口走って、逃げの一手だ。だいたい石原伸晃は都知事選の冒頭の街頭演説で「今日をもって小池候補は自民党の候補ではない」と宣言しているではないか。千代田区長選挙の総決起大会も、メディアをシャットアウトして、人気の沸きそうもない自民党候補を官房長官・菅義偉が激励したが、公開しないのは小池を刺激しないためだという。
要するに、自民党は小池の動きが読めていないとしか思えない。小池の第一の狙いは、自民党を挑発して、自らのクビを切らせ、「悪役自民党にいじめられた正義の女性都知事」を演じて、都民の同情を買おうとしているのだ。進退伺いなどは無視して、自分から離党届けをたたきつけないのは、老獪(ろうかい)の老獪たるゆえんである。小池はすべての発想がポピュリズムなのだ。やたらと不適切な英語を使うのもポピュリズムなら、追及されて作り笑いで流し目を使うのもポピュリズム。連日ファッション・ショウをやっているのもポピュリズム。そのポピュリズムの権化に、このところけんかをやったことのない自民党が、いいように操られているのが現状だ。小池を見抜いている政治のプロの多くは、この種のポピュリストは必ず高転びに転ぶと信じているが、小池は運がいいからまだ転ばない。まだろくなスキャンダルも出ない。小池都政への都民の支持率はJNNの調査で81%と、プーチン並みだ。オリンピックの準備を全く意味のない3会場移転問題で停滞させたことくらいでは、魔術にかかった都民の支持率は下がらない。
こうした小池のつくりつつある都議会自民党との激突の構図を前にして、自民党本部も、都連も、まだもみ手で小池をなだめようというつもりなのだろうか。明確な党規違反にいつまで目をつむるのか。先の都知事選で自民党票はなんと49%が小池に流れ、自民党が推した増田寛也には40%しか行かなかった。都議選も、小池が刺客40人を擁立すれば、伏魔殿的と見られている都議会自民党は攻撃にさらされて、壊滅的打撃を被る恐れすら出てきている。組織も崩される恐れが十分ある。ここは、もみ手をしているときではない。自民党は態勢を立て直して、本来の「戦う自民党」として小池を切って、激突の構図をつくった方がよい。激突の構図の中で全党挙げての対小池の背水の陣を敷くべき時だ。あいまいなままでは、小池に食い散らかされるだけだろう。
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