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2007-01-29 06:28
東アジア共通の産業基盤整備に向けて
村上正泰
日本国際フォーラム主任研究員
1月25日付『日刊工業新聞』によれば、経済産業省は、東アジア共通の産業基盤整備に向けて技術協力方針の策定に着手するそうである。具体的には今後議論が行われるが、中小企業診断士制度や公害防止管理者制度、自動車産業関連の資格制度などを念頭に、日本の産業発展に寄与した制度や技術を「アジア標準」と位置付け、東アジアにおける展開策を検討すると報じられている。併せて、産業人材の育成支援策についても取りまとめるとのことである。
地域経済統合に関しては、FTAの推進について議論されることが多いが、地域全体でどのような経済システムが形成されていくのか、それがすべての関係国にメリットをもたらすものになるのかといった視点も重要である。東アジア地域においては、政治経済制度面での多様性が存在している。こうした中にあっては、FTAを締結して貿易を自由化し経済活動を活発にしさえすれば望ましい経済秩序が形成されるとは限らない。むしろ理論的に言えば、望ましくない制度が支配的になることさえあり得る。したがって、効率的な市場経済が公平かつ安定的に機能するための制度的基盤の構築とその域内調和が不可欠となってくるのである。こうした観点から、上記のような経済産業省の取り組みは高く評価することができよう。
ただし、我が国で成功したからといって、特定の制度をあまり押し付けがましく強制するような態度はとるべきではない。この点については経済産業省も認識しているようであり、当初は各国の状況に合わせた内容とし、制度の進化や浸透により、最終的にアジア共通の基盤にしたい考えとのことである。東アジア地域における制度の多様性ゆえの難しさがあると思われるが、それぞれの国の事情にも目配りをしながら地域的な制度の調和を目指すという複眼的な取り組みが求められているのであり、FTAの推進に当たってはこうした施策もうまく組み合わせていく必要がある。
いずれにしても、地域協力のためには、何をすべきか、何ができるのかということを具体的に考えていく必要があり、このような取り組みが着実に進められていることは歓迎すべきことであろう。
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