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2016-11-26 23:19
日本のビジネスチャンスとなるトランプ政権誕生
田村 秀男
ジャーナリスト
米大統領選は大方の事前予想を覆して共和党トランプ氏の勝利が確実になった。新政権は環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の撤回など、グローバリゼーションの巻き戻しに取り組むだろうが、たじろぐことはない。日本にとってはビジネス・チャンスととらえる発想こそが必要だ。今回の米大統領選がこれまでと異なるのは、景気との関連が希薄な点だ。緩やかに景気は回復したが、製造業などの実質賃金は上がらず、不満を持った階層が保護貿易と排外主義を叫ぶトランプ氏に共鳴した。グローバリズムとは金融市場が示す基準に企業が従うことだ。国境を越えて移動する巨額の資金を引きつけるためには、企業が資産を刈り込み、労働コストを抑えて利益率を上げ、株主に利益還元する。
米国流自体のパフォーマンスはどうか。日米の税引き前経常利益に対する総資本と株主資本の比率を比較してみた。米国の利益率は2008年9月のリーマン・ショック後めざましく回復したあと、いずれも下降線をたどっている。対照的に日本は13年以降、総資本、株主資本の利益率とも上昇を続けている。水準はいずれも日本が米国を上回っている。13年に始まったアベノミクスの成果とも言えそうだが、実質経済成長率は日本が0%前後で低迷しているのに対し、米国は2%前後である。資本の利益率の不振からすれば、米国の金融主導型グローバル・モデルは落ち目である。それこそが、米エスタブリッシュメント(支配階層)のTPPに対する消極姿勢を生んでいる背景だろう。
米資本は自由化、グローバリゼーションで実際に勝てるかどうか、不安なのだ。来年1月に発足する新政権は従来型グローバリズムに背を向けると同時に、代案を用意するだろう。その中身は不明だが、多国間協定に代わり、2国間主義が主流になるだろう。日本はどう対応すべきか。安倍晋三政権はTPPを日本再生の一環として位置づけし、米新政権と議会に批准を求めてきた。トランプ新政権は応じないどころか、日本の円安を牽制し、「円安誘導」のクレームを付けて対日報復をちらつかせかねない。今後約2カ月間の新政権への移行期の間の日米対話が重要になる。
日本企業はどうか。株主重視の米国モデルに追随し、米国を追い越したのだが、株主資本の多くは利益準備金で占められる。設備投資や賃金・雇用に資金を回さずに、利益をため込んでいる。12年末から今年6月末にかけての株主資本(純資産)増加額は114兆円、このうち利益剰余金は90兆円にも上る。リーディング企業は、国内重視の積極投資攻勢に転じてはどうか。米国型をこれ以上、墨守したところで、円安・外需頼みでは行き詰まる。国内投資で雇用改善を実現し、日本型モデルを確立し、米国に対して日本の存在感を高めるときだ。
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