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2016-11-08 18:14
米大統領選挙と外国指導者たち
川上 高司
拓殖大学教授
いよいよ今後4年間のアメリカ大統領が決定する。アメリカは内向きになってもやはり大統領が世界に与える影響は絶大である。どの国も自国への影響があるのだから投票権が欲しいと思っているに違いない。今回の選挙は史上最低と言われているが、そうはいっても「トランプになってほしい」と思う外国指導者もいるのである。選挙戦中から明確にトランプを支持しているのはロシアのプーチン大統領である。トランプはシビアな現実主義であることから、「ウマが合う」とプーチンは大歓迎である。ヨーロッパでもプーチン派であるチェコもまたトランプ派に回っている。シリア難民で苦労したハンガリーは、反イスラムを吠えるトランプを文句なしに歓迎する。その反イスラムという立場からスロバキアもトランプ派である。
明確には歓迎していないが、密かにトランプ大統領に期待しているのがイスラエルのネタニヤフ首相だろう。イスラエルはパレスチナ問題を巡ってオバマ大統領に冷たくされ、アメリカとの関係は最悪になっている。また、イランとの宥和路線を採った現政権の外交路線を引き継ぐであろうクリントンを受け入れるわけにはいかない。イランとの核合意を反故にするであろうトランプを歓迎するのは当然であろう。現政権との関係が悪化しているため、同じ路線を採るクリントンを歓迎しない国は他にもある。トルコはシリア政策を巡ってオバマ政権とは関係が悪化している。トランプが大統領になれば関係がリセットされて前進する可能性がある。さらに最近独裁政権色を強めてきたエルドガン大統領にとって、人道主義をかかげるクリントンはますます歓迎できない。
クリントンはリベラル・ホークであり、人道のためなら軍事行動も辞さない。「人権外交」を展開する可能性もある。人権問題が外交の俎上に乗ることが好ましくないと考える国もある。中国もどちらかといえばクリントンよりはトランプのほうがありがたいだろう。トランプの外交政策ははっきりしている。まずアメリカが最優先である。オバマ政権も内向きだったが、トランプはさらに突き進む。環境問題の国際協定である「パリ協定」からの離脱、TPPからの離脱などトランプの外交政策はまさに孤立主義そのものである。環境問題は、ようやく大国であるアメリカがCO2の排出規制に乗り出し、地球規模で取り組めるようになった矢先のことである。だがトランプはそんなしがらみにはとらわれない。
一方で同盟国には厳しい要求をつきつけてくる。日本には駐留米軍の費用の負担を増やすことを要求する。トランプは政治の世界ではまさに一匹オオカミでしがらみがない。その分、これまでの経緯や過去の積み重ねといった感情的なアプローチは全く通用しない。日本にとってトランプ大統領は最も避けたい選択肢だろう。ヨーロッパの先進国はおおむね安定しているクリントンを歓迎するだろうが、世界にはトランプを歓迎する国々もある。どちらが選ばれたとしても世界に与える影響は大きい。
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