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2016-10-28 19:30
人民元で日本のマンション爆買い
田村 秀男
ジャーナリスト
「借り手の多くは今や中国からのお客さん」(某メガバンクの東京都心部支店の幹部)。同支店は日銀のマイナス金利導入に合わせて住宅ローン金利を下げたが、客足はいまひとつ。そこで、外国人向けの審査基準を緩め、永住者限定の条件を外すと、中国人が殺到、多額の頭金を見せるので、直ちに融資承認だ。中国マネーパワーの源泉は人民元の現預金だ。年間約250兆円、日本の8倍もの規模で膨張している。その富の大部分は1億人余りの中間層以上の人々が握る。一人当たり年間5万ドルの外貨持ち出し制限をものともせずに、香港の銀行や「飛銭」と呼ぶ闇のルートを通じてやすやすと外貨に替え、送金する。
その人民元に国際通貨基金(IMF)・特別引き出し権(SDR)構成通貨の刻印が押された。「国際通貨のエリート・クラブ」とも呼ばれるSDRのランクで円を飛び越え、ドル、ユーロに次ぐ。世界各国の中央銀行は人民元を準備資産に加えるし、主要な銀行が決済に応じるので、人民元パワーは威力を増す。中国は石油などあらゆる資源、高度技術や兵器も中国人民銀行が刷る「国際通貨」で買いやすくなる。中国主導で発足したアジアインフラ投資銀行(AIIB)は、人民元を武器に中華圏をアジア全域に広げようと狙うが、南シナ海への進出が示すように中国の勢力拡大は緊張をもたらす。
カネは情報を運ぶ。北朝鮮への米国主導の金融制裁が有効なのは、銀行間の国際決済ネットワークを流れる北朝鮮のドル資金ルートを突き止め、遮断できるからだが、北朝鮮に対し人民元決済で応じる中国の金融機関の制裁破りは見抜けない。習近平政権は昨年11月のSDR入りを確認するや、人民元の国際決済ネットワーク「CIPS」を立ち上げた。世界の主要銀行を組み込み、ドル決済ネットを浸食する。北朝鮮など問題国が人民元決済に乗り換えると、北京が協力しない限り、ワ シントンはにらみをきかせられなくなる。
責任ある国際通貨には、金融市場の開放、外国為替の変動相場制移行など市場自由化が欠かせない。IMFは自由化をSDR入りの条件としたのだが、習近平政権はことごとく無視してきた。党指令による銀行融資は不動産バブルと過剰生産設備を生み、最終的には銀行の不良債権となる。不良債権はIMFの推計で、今年3月末で国内総生産(GDP)の20%を超え、膨張を続けている。グローバル市場に人民元が深く組み込まれた今、中国のバブルが崩壊すれば、世界への衝撃はこれまでの比ではない。日本も世界も無法通貨、人民元に荒らされないよう、これ以上の膨張を阻止すべきではないか。
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