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2016-10-15 17:16
忘れられたイエメンの内線
川上 高司
拓殖大学教授
シリアでは米露の停戦合意期間が終了するや否や戦闘が再開し、アメリカは空爆で多くの市民を犠牲にしているとロシアを非難している。シリアの内戦は毎日のように世界中のメディアに取り上げられ注目を集めている。その一方で多くの市民が犠牲になり人道的危機が叫ばれて久しいものの国際社会から全く注目されない戦争がイエメンでの内戦である。この内戦はあたかも存在していないかのようである。まさに忘れられた戦争と言える。
イエメンでは、スンニ派である政府とそれに抵抗するイランの支援を受けているシーア派の反政府勢力が衝突し、2015年3月からサウジアラビアはスンニ派政府を支援するため空爆により軍事介入を開始した。2015年3月の空爆開始から2016年8月までの間に空爆は8600回を超え、そのうちの3158回は学校やモスクなどの非軍事施設だった。空爆による犠牲者は10,000人を超えておりそのうち少なくとも3799人は民間人と言われている。空爆の1/3が民間施設をターゲットにしているがサウジ側は「反政府勢力が学校や病院を拠点している以上もはや軍事上の標的になる」と主張し、非軍事施設への空爆を躊躇しない。民間人の犠牲者は増えるばかりである。
オバマ政権下ではサウジアラビアに対してこれまで1150億ドルの軍事支援をしている。オバマ政権はさらに11.5億ドルの軍事支援を要求したが上院議会がこれを拒否しサウジアラビアへの軍事支援に歯止めをかけたものの、アメリカがサウジ政府を支援しそれがイエメンの内戦の激化の遠因となっている事実は変わらない。その一方でケリー長官はイエメン内戦終結に向けて軍事力ではなく外交で解決するべく奔走しているが、和平交渉は8月に決裂しており解決の糸口すらつかめていない。
オバマ大統領は就任以来新孤立主義を貫き、世界の紛争から距離を置きその代わりリージョナルな主要国にその地域の紛争を任せる政策を採ってきた。だがイエメンの内戦を忘れらた戦争にしてはならない。オバマ大統領がイラクとアフガニスタン戦争を負の遺産として受け継ぎ終結させたように、次期大統領はイエメンの内戦を終結させなければならない。
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