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2016-08-23 12:10
「平和安全法制」の実効性を高めよ
加藤 成一
元弁護士
昨年9月に「平和安全法制」が成立してから、早くも1年が経過しようとしているが、その間における、中国による尖閣諸島への度重なる領海侵犯や軍事挑発、北朝鮮による水爆実験や弾道ミサイル発射による軍事挑発などを見ると、日本を取り巻く安全保障環境は一段と緊迫化の程度を強めていると考えざるを得ない。日本政府としては、早急に「平和安全法制」の実効性について検証し、それをさらに高める具体的措置を検討する必要があろう。
昨年成立した「平和安全法制」の最大のテーマは、東アジアの安全保障環境の変化に対して「日本を如何に守るか」であった。そのための政策論、法律論としては、(1)日本を守るためには、個別的自衛権だけでは不十分であり、集団的自衛権行使を一部容認する必要がある、(2)個別的自衛権だけで十分であり、集団的自衛権行使は、他国の戦争に巻き込まれる危険性があるから適切ではない、(3)集団的自衛権行使は、憲法9条と政府の長年の憲法解釈にも違反し、違憲である、との3つの議論に集約されよう。
まず、(2)一国による単独防衛だが、そのためには他国からの武力攻撃を抑止し且つ反撃するに足りる十分な核戦力と通常戦力が必要であり、これらの条件をクリアーできる国は、世界でも米露中3か国ぐらいしかない。(3)の違憲論については、これを最終的に判断できるのは、憲法学者らではなく、最高裁判所であることを指摘しておきたい。最高裁判所は、必ずや適正且つ妥当な憲法判断を行うであろう。問題は、(1)の集団的自衛権の一部行使を容認した「平和安全法制」が成立してからも、中国や北朝鮮による軍事挑発が止まず、かえってエスカレートしていることである。「平和安全法制」は、たとえ、いざという時のための「伝家の宝刀」であるとしても、「絵に描いた餅」であってはならず、常に実効性を高める具体的措置をとらなければならない。
具体的には、(1)重要影響事態安全確保法第2条に基づく「後方支援」としての、尖閣諸島周辺海域をパトロールする米軍艦船や航空機に対する日本の後方支援活動、(2)日米安保条約第4条の、日本の安全に対する脅威が生じた場合の「協議」に基づく、自衛隊と米軍との尖閣諸島周辺海域における共同監視活動、(3)尖閣諸島の実効支配と周辺海域の制空権、制海権を維持確保する目的のために特化した陸海空自衛隊による大規模な合同特殊部隊の編制配備、(4)尖閣諸島周辺海域に特化した新たな領土領海領空保全警備法等の制定、などの検討が求められる。
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