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2016-08-15 15:14
日本は「非核三原則」を再検討せよ
加藤 成一
元弁護士
核兵器を「持たず、作らず、持ち込ませず」のいわゆる「非核三原則」は、1968年佐藤栄作首相が提唱し、国会決議を経た日本の「国是」であるとされているが、それからすでに半世紀が経過して、日本を取り巻く東アジアの安全保障環境は激変した。何よりも、核兵器を保有し、今や軍事大国・経済大国となった中国による、わが国固有の領土である尖閣諸島に対する傍若無人な領海侵犯のエスカレーションや、南シナ海における人工島建設や軍事基地化などの国際法を無視した一方的行動、さらに、「核保有国」である北朝鮮の度重なるミサイル発射による日本に対する軍事的挑発や威嚇など、東アジアにおける安全保障環境の急激な悪化を考えると、今や日本にとって、「非核三原則」の再検討は急務であろう。
これまでの中国の一貫した軍事力行使のパターンは、相手国が弱いとみれば躊躇なく侵攻し、強いとみれば決して手を出さないことである。人民解放軍による新疆ウイグル自治区への侵攻、チベットへの侵攻、台湾に対する50万発の砲撃、中印国境戦争でのインドへの侵攻、中越戦争でのベトナムへの侵攻などや、米軍撤退後におけるフィリピン実効支配の南沙諸島占領なども、これに当たるであろう。中印国境戦争は、インドが核武装をする前のことである。現在の南シナ海における中国による一方的な人工島建設や軍事基地化の強行も、フィリピンやベトナムなどの周辺国が、到底軍事的に中国に対抗できないことを知り尽しているからである。その反面、中国よりも軍事力が優勢なアメリカには決して手を出さない。最近、北朝鮮の軍事挑発に対抗して「高高度迎撃システム(THAAD)」の配備を決断した韓国政府に対する中国による異常ともいえる非難恫喝も、近隣国の防衛力強化が自国の軍事力行使の障碍となるからである。
このような中国の行動パターンを考えれば、日本の防衛力が弱いとみれば、躊躇なく軍事力により尖閣諸島を取りに来るであろう。なぜなら、中国にとって尖閣諸島は中国固有の領土であり、中国の核心的利益に属し、国内法で自国の領土に編入しているからである。しかし、日本が将来核武装をすれば、中国は軍事力による尖閣諸島奪取を諦めるであろう。なぜなら、軍事力による尖閣諸島奪取は、最悪の場合、日本との核戦争を覚悟しなければならないからである。用心深い「孫子の兵法」を実践する中国は、決してそのような危険を冒さないであろう。その意味では、中国にとっては、日本が核武装をしていない今こそが、尖閣諸島奪取の唯一最大のチャンスともいえよう。7月27日付け中国メディアの『東方頭条』は、「日本は核兵器製造能力を持つが、非核三原則があるため製造することができないから、日本を恐れるには及ばない。」と述べている。これが中国の本音であろう。中国は、日本の核武装を最も恐れているのである。
「非核三原則」は、確かに、世界で唯一の戦争被爆国である日本にとっては、「核兵器なき世界」の実現を目指す崇高な理想であり方針ではあろう。しかし、日本の「非核三原則」の方針は、あくまでも日本一国だけの方針に過ぎず、もとより中国や北朝鮮を縛るものではない。彼らにとっては、日本が「非核三原則」に縛られ、未来永劫にわたって「核を持てない国」であり続けることが、彼らの国益にとってこれほど好都合なことはない。なぜなら、日本を核攻撃しても、日本から核による反撃を受ける恐れが全くないからである。最も懸念される点は、日本が、「核兵器なき世界」を目指す理想としての「非核三原則」を未来永劫にわたって遵守するあまり、わが国固有の領土である尖閣諸島を奪われたり、さらに日本本土が核攻撃されるなど、日本国の存立と日本人の生命にとって重大な事態が生ずる可能性を排除できないことであろう。そのような可能性を排除できないとすれば、日本国民は「非核三原則」の再検討から決して逃げてはならないであろう。
核不拡散を推進するアメリカ政府の方針や、NPT体制からの脱退による国際世論の反発などを考えると、日本が近い将来、「非核三原則」を全面的に放棄して、独自に核武装をすることは事実上困難であろう。しかし、最近の中国や北朝鮮の動向を見れば、少なくとも「非核三原則」のうちの「持ち込ませず」の方針は早急に再検討する必要があろう。日本本土への核持ち込みは、日米間の協議のみによって可能であり、NPT体制からの脱退を必要とせず、国際世論の反発は限定的であろう。日米による「核兵器の共同管理体制」でもある日本本土への核持ち込みは、日本の核抑止力や自衛力を格段に強化させ、中国や北朝鮮からの核攻撃や、中国による尖閣諸島奪取を抑止する極めて有力な選択肢であることは明らかである。
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