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2016-05-26 10:32
再発する中国不動産バブルの不気味さ
田村 秀男
ジャーナリスト
5月の連休は、久方ぶりに上海など中国の江南地方を回ってきた。まっすぐに伸びる片側4車線の高速道路、その両側には幅1キロメートル以上はあるかとおぼしき分厚い緩衝緑地帯。その向こうは高層マンション群の建設工事ラッシュだ。上海浦東地区では、完工したばかりの上海タワー・ビルがそびえ立つ。このビルの高さは632メートルで、東京・浅草地区の東京スカイツリー(高さ634メートル)とほぼ同じ。超高層ビルとしてはドバイのブルジュ・ハリファ(高さ828・9メートル、ビル本体は636メートル)に次ぐ世界第2位である。天上の世界に達する建築物を建てようとして、神の怒りを買ったという旧約聖書「バベルの塔」の寓話、あるいは画期的な超高層ビルが建つたびにバブル崩壊が起きるという現代のジンクスを思い起こさせる。いったい、中国の不動産市場はどうなっているのか。不動産バブルは崩壊ずみではなかったのか。
上海の不動産平均相場と中国の銀行融資年間増加額の推移を見てみる。共産党中央は2008年9月のリーマン・ショック後、党の指令下にある中国人民銀行と国有商業銀行に大号令をかけ、銀行融資をそれまでの3倍以上に増やさせた。地方政府は土地を農民や住民から取り上げ、デベロッパーを招いては不動産開発にいそしむ。中国全土で不動産バブルが起きたが、12年には破裂した。崩壊前には銀行の新規融資額は大きく減っている。住宅市場の過熱に慌てた当時の胡錦涛政権が冷やしにかかった結果だった。各地で巨大なゴーストタウンが生まれ、現在でも醜悪な姿が野ざらしになっている。
上海、北京、深圳など沿海部の巨大都市は様相が異なる。不動産市況悪化とともに生じた景気悪化局面を打開しようと、党中央は再び銀行融資のかさ上げを命じた。余剰マネーは主として上海など巨大都市部に集中し、不動産相場を押し上げるようになった。何しろ、融資の増加額の規模はすさまじい。最近では、日本円換算で200兆円を超えている。年間融資増加額は15兆円に過ぎない日本とはまるで比較にならない。上海の知り合いは今年初めに億ションを買ったが、数カ月で1000万円相当、値上がりしたとほくそ笑んでいた。
異様な規模の融資の増加は、同時に同規模の債務の膨張をもたらす。不動産開発は鉄鋼、セメントなどモノの需要を押し上げるが、上海など一部地域に集中しており、11年当時の全国規模の開発とはわけが違う。鉄鋼などの過剰生産能力は温存されたままだ。銀行融資を抑えると、たちまち不動産バブルは崩壊し、資本逃避ラッシュが起き、人民元暴落の危機が再発しよう。高水準の銀行融資を続けるしかないが、その分だけ不動産バブルが巨大化するだけだ。バブルと債務主導の中国経済は、日本を含め世界を巻き込むだけに不気味だ。
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