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2016-03-18 05:32
核をもてあそべば北は自滅の道
杉浦 正章
政治評論家
オオカミ少年の寓話は子供の自滅だが、一国の指導者の自滅の話が面白い。昔、周の幽王(ゆうおう)が全く笑わない絶世の美女褒姒(ほうじ)を溺愛していたが、あるとき手違いで敵襲を知らせる狼煙(のろし)が上がってしまった。すると空振りを食わされて慌てた諸侯の様子を見て褒姒が笑った。これに喜んだ幽王は度々嘘の狼煙を上げた。その後、実際に敵襲があったが誰も狼煙を信じる者がなく、幽王は褒姒ともども殺されてしまったというものだ。まさに北朝鮮の核ミサイルをもてあそぶがごとき発言をくりかえす金正恩と、これに盲従する軍幹部の言動が、この運命を物語るかのようである。北の狙いは“心理戦”であろうが、金正恩のヒトラーやスターリンに通ずる狂気の全体主義者的体質が、あり得ない話をあり得るものとしかねないところがまさにポイントなのだ。
たしかに北からは気違いじみた発言が続く。金がミサイルの大気圏突入実験に成功したと発表し、「アメリカが我々の生存権を核で襲おうとするときは容赦無く核で先手を打つ」と核先制攻撃を明言。ついで国防委員会声明は「米本土を標的とする強力な核攻撃手段が常に発射待機状態にある」と威嚇する。加えて人民軍参謀部声明に到っては「侵略者を射程圏内に入れた吾が軍隊は懲罰の発射ボタンを押す時刻だけを待っている」のだという。最新の大陸間弾道ミサイルKN08に核爆弾を登載して「今にも発射するぞ」という、“やくざ国家”の脅しが続いている。専門家によると、これを実行に移す場合は第一ターゲットが韓国大統領府。第二ターゲットが在日米軍基地とワシントンなのだそうだ。こうした脅迫を裏付けるかのように、金は「核弾頭の爆破実験と様々な種類の弾道ミサイルの発射実験を断行する」と言明した。その時期がいつになるかだが、金日成や金正日と異なり金正恩のやることは、常々異常性がみられるが故に、予測が極めて難しい。4月いっぱい続く米韓軍事演習の最中でもやりかねない気配がある。現に3月10日午前、日本海に向けてスカッドミサイルとみられる短距離弾道ミサイル2発を発射している。
3月31日からはワシントンで核サミットがあり、2014年の核サミットの際は直後にノドン2発を日本海に発射している。また2012年のソウル核サミットの際も、ミサイルを発射している。しかし金の言う核弾頭の爆破と弾道ミサイルの発射実験については、専門家の大方の見方は5月上旬ではないかというものが多い。いくら金でも史上最大の米韓軍事演習の最中に実験をやって、米軍の攻撃に結びつくことは避けたいという“理性”が働くであろうというわけだ。5月上旬である理由は、金が指導権確立を目指す36年ぶりの朝鮮労働党大会が上旬に予定されているといわれ、それに先だって行われる可能性が高いというのだ。今度は金の言う核と弾頭の両方の実験となりかねない側面もあるようだ。金の狙いは、かねてからの金王朝の理想がそうであったように、核弾頭登載の大陸間弾道ミサイルを入手することにより、米国に脅しをかけて韓国を放棄させ、朝鮮半島の統一を図るというところにある。しかし先祖はこの構図による統一など信じていないところがあったが、金はこれを信じ切っているところに危うさが存在するのだ。
しかし戦略核の使用について、これまで核大国が実行できなかった法則があることを金はまだ“学習”していないかのようである。それは核には核の報復があり、自らも存在し得なくなるという単純明快な法則である。広島・長崎以来、どんなに情勢が緊迫しても核の使用がなかったのは、この法則があるからだ。金はイロハを知らないで騒いでいるのである。考えてもみるが良い。北が核ミサイルを発射しかねないような緊迫した状況下において、発射台にミサイルが準備されれば確実に米国は核による先制攻撃を断行するだろう。移動式発射台の場合は発射をとらえ難い側面があるが、それでも発射されれば、ミサイル防御網を突破しようがしまいが、北は核攻撃にさらされるのだ。この場合中国もロシアも手を出すことをためらう可能性が高い。発射の場所を特定しにくければ北朝鮮全土に絨毯爆撃的な核攻撃が断行されるだろう。韓国大統領・朴槿恵が「北朝鮮が挑発を続ければ自滅の道をたどることになる」と述べているのは、そういう事なのだ。だれか刈り上げ頭のドンにこの核戦略のイロハを教えてやって欲しいものだ。
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