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2016-03-10 20:49
ジョージ・ソロスに軍資金を提供する党幹部
田村 秀男
ジャーナリスト
現在の国際金融市場のリスクは、「4C」と呼ばれる要因で代表される。中国(CHINA)、国際商品(COMMODITY)、信用(CREDIT)、消費(CONSUMPTION)である。原油など国際商品市況は中国バブルの崩壊が最大要因だし、信用もその裏返しである債務は中国で膨らんでいる。つまり、4Cのうち3つのCが中国発である。その中国・上海で2月26日から2日間、日米欧や新興国などで構成される20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議が開催された。当事者の中国は自国が危機の震源地呼ばわりされるのを嫌い、むしろ世界経済安定のために貢献していると強弁することが予想された。
論より証拠。中国の実需を反映する鉄道貨物輸送量の減少にぴったりと連動して、石油、鉄鉱石など国際商品相場が急落を続けている。底が見えないという不安が世界の株式市場に伝播している。気になるのは麻生太郎財務相と黒田東彦日銀総裁の発言だ。黒田総裁は、1月下旬の世界経済フォーラム年次会合(ダボス会議)で中国の資本規制強化を肯定した。国際通貨基金(IMF)による人民元の特別引き出し権(SDR)認定条件である金融市場の自由化約束違反を北京に勧めるという発言である。
習近平党総書記・国家主席や周小川・中国人民銀行総裁は、日本の通貨・金融当局首脳による思わぬ援護射撃にほくそ笑んでいるだろう。現実に資本規制を強化し、公安当局まで動員して言論を統制している。上海会合では国際的な批判を浴びせられかねないためだ。黒田発言の2日前、ダボスでは為替投機で知られるジョージ・ソロス氏が「中国のハードランディングは不可避だ。これは予想ではなく、実際に目にしていることだ」と言い、北京の党中央を震撼させている。為替投機というのは、投機対象の通貨建ての資産、例えば株や国債などの債券、あるいは銀行融資など資金提供のルートがなければ、事実上不可能だ。ソロス氏に限らず人民元投機を狙うヘッジファンドも肝心の元という弾薬を仕込んでいるわけではない。
しかし、ソロス氏に賭けて大もうけをたくらむ投資家は、他ならぬ中国国内にゴマンといる。資産を海外に移そうとする国有企業や党幹部たちである。習近平政権が恐れるのはいわば獅子身中の虫である。麻生財務相は、対中融和主義に引きずられずに、中国に自由化約束の履行を迫るべきだ。そもそも上記の3Cリスクを中国が撒き散らす原因は、党が支配する経済モデルの破綻による。その体制を温存すれば、更なる大災厄が日本、さらに世界に降りかかってくる恐れがあるのだ。
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