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2016-02-04 06:33
岡田の「TPP疑獄」質問は空振り
杉浦 正章
政治評論家
新聞各社の予算委担当記者の目はどうも節穴らしい。肝心のやりとりを見逃している。筆者のように録画して克明に分析すると、焦点は民主党代表・岡田克也が「甘利事務所の金銭授受」をあたかも「TPP疑獄」へと直結させるかのように、首相・安倍晋三への質問を展開。これに「マジ切れ」した安倍が「無責任な誹謗中傷」と、かんかんになって怒って否定したのが。質疑応答の核心部分だ。あまりの剣幕に岡田は夜のテレビで「衆院選は4月かもしれない」と、とち狂ったような予言をした。解散については安倍のことだから何をするか分からないが、いくら何でもサミット直前の外交が慌ただしい時期に解散するだろうか。予算早期成立を目指す野党向けのブラフに過ぎまい。疑獄事件とは、政治問題化した大規模な贈収賄事件のこと。戦後の3大疑獄事件は、芦田均内閣をつぶした昭電疑獄事件(1948)と、造船疑獄(1954)、ロッキード事件(1976)を指す。岡田の質問はあきらかに第四の疑獄事件として「TPP(環太平洋経済連携協定)疑獄」を“創作”しようとしているかのようであった。岡田は「甘利氏が大きな権限を持ってTPPの責任者としていろいろなことをやっている。ちゃんと検証すべきだ。TPPは業界や農業に携わる人達にとって死活問題だ。生産者から見ると、巨大な権限を持った人が疑いをかけられていることについて、疑惑を持つべきだ。甘利氏に確認する必要がある」と、あたかもTPP関連業界や農業従事者から甘利が贈賄でも受けているかのような質問を展開した。
これには、ただでさえ予算委員会で激高しがちな安倍が、まるで怒髪天をつくかのような反応をした。文字数にして質問の5倍ほど反論を展開したのだ。「TPPに影響が出たというなら具体的に言ってください。私がないと言うものを一党の代表として嫌疑をかけるなら、TPP交渉においてどの品目にどの影響を与えたかについて具体的に言うべきだ。そうでなければ無責任な誹謗中傷にすぎない」と反論。まだ言い足りないとばかりに、「交渉そのものを汚すようなことを言うのはやめるべきだ。甘利大臣は命がけでTPP交渉を頑張って、結果を出してきた。いきなりそういう言いがかりをされても答えようがない」と憤まんをぶちまけた。
岡田は「ない、と言ったのはあなただ。本会議で断言した以上、その根拠を示す責任がある」と応戦した。これに対して安倍は委員会に響き渡る大声で「私はないと言いきった。ないことをないと説明することは悪魔の証明だ。あると主張する方が立証責任がある」と答えた。論戦技術としては「悪魔の証明」を持ち出した安倍の方に説得力があった。「悪魔の証明」とは、証明不可能な命題を証明すること。例えば「四国にコドモトカゲが生息する」ということを証明するとしたら、四国でコドモトカゲを一匹捕まえて来ればよいが、「四国にコドモトカゲは存在しない」ということの証明は、四国全土を探査しなくてはならない。事実上不可能なことを求めることを悪魔の証明という。
岡田の狙いは、テレビの視聴者に対して疑惑の輪を増幅させようとする意図がある。岡田は安保法制をめぐっても「徴兵制が実現する」というパンフレットを作らせたり、すぐに嘘がばれるようなオオカミ少年型プロパガンダをするが、今度も視聴者を「TPP絡みでも贈収賄があったげな」という風評が立つように誘導しようとする意図がありありと見える。そもそも今回の甘利事務所をめぐる疑惑は、環状道路をさえぎるようにある建設会社が、民主党の大西健介の質問によれば「ごね得を狙っているようなところに、秘書が加担した」ところにある。週刊誌へのリークは秘書が金銭や接待漬けにあったにもかかわらず、ごね得が実現しなかったことからの確執が原因である。したがって、TPP交渉とは何ら関係がない。にもかかわらず岡田は、疑惑を最大限活用しようと「TPP疑獄」があるかのような質問を展開したのだ。TPPで贈収賄があれば、まさに内閣が吹き飛ぶような問題であるが、質問には全く根拠がない。安倍が「一つも事実を挙げられないのに、あるかのように言う。議論としては馬鹿げた議論である」と発言したが、もっともだ。やせたりといえども公党の代表が流行語ではないが「ゲスの極み」の三流週刊誌のような卑劣な質問を予算委の冒頭で行うようでは、野党の追及もお先が知れている。
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