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2016-01-08 22:51
ルビオ候補が示す4つの北朝鮮対策
河村 洋
外交評論家
北朝鮮が1月6日に行なった「水爆」実験は世界に大きな衝撃を与えた。これほどまで度重なる核実験に鑑みて、国際社会はこれまでより有効な手を打つ必要に迫られていることが明らかになった。そうした中、今回のアメリカ大統領選挙の候補者の中で安全保障政策に最も通じている共和党のマルコ・ルビオ上院議員が4つの対策を示している。第1は北朝鮮をテロ支援国家に再指定することである。第2は経済制裁の強化である。さらに第3にはアジア太平洋諸国との同盟強化とアメリカ自身の海軍力強化である。第4はミサイル防衛の強化である。
ルビオ氏が挙げた対策の内で強力な効果を期待できるとともに、比較的早く実行できるという条件を満たしているのは、第4のミサイル防衛の強化を中心とした抑止力の強化である。第3の海軍強化は必要かつ強力な対策にはなるが、すぐにできる対策ではない。艦艇の建造には時間がかかるのだ。いずれにせよ、これまでの経済制裁よりもさらに強力な手段で北朝鮮が我々には勝てないことを知らしめねばならない。さらに1月7日付けの『朝鮮日報』は、1990年代初頭に在韓米軍から撤去された戦術核兵器の再配備を主張している。同日の韓国の英字紙『コリア・ヘラルド』は、さらに進んで「日米韓の間でIAMD(統合防空およびミサイル防衛)の強化をすべきだ」という議論まで掲げている。こうして北朝鮮に対する防衛能力と攻撃能力をしっかり見せつけ、決して彼らが我々よりも強いのだと思い上がらせぬようにしなければならない。
経済制裁の強化はもちろん重要である。しかし、北朝鮮に対しては国際社会がこれまでに何度も制裁を科してきたことを忘れてはならない。また、経済制裁をどれだけ厳格にしても抜け道があることは避けられない。何と言っても貧困に慣れた国民にどれだけ制裁を強化しても、大きな痛手を感じないだろう。過去の事例でも経済制裁の効果は時間がかかる。1979年のソ連によるアフガニスタン侵攻には西側を中心とした経済制裁がかされたが、それが赤軍の撤退を促したわけではなかった。むしろレーガン政権期が600隻海軍やSDI構想といった軍備増強を打ち出したことで、アメリカとの軍拡競争について行けなくなってソ連がペレストロイカを採用したのである。その他にもアパルトヘイト時代の南アフリカはアラブ諸国からの石油禁輸という制裁を受けたが、石炭液化で乗り切った。むしろ当時の南アフリカはアフリカで最も豊かな国だった。しかも、アメリカとイギリスはアジアとヨーロッパを結ぶ地理的条件から大英帝国の戦略要衝だった南アフリカを共産主義の防波堤と見なし、国際的な制裁には及び腰だった。
こうした歴史を振り返ってみても、経済制裁だけで北朝鮮を屈服させされるとは考えにくい。やはり力を背景にした交渉で北朝鮮に臨む必要がある。また中国は六ヶ国協議の重要な当事者ではあるが、北朝鮮に対するこの国の影響力を過大評価すべきでなないだろう。1990年代に核実験の相互応酬で世界に緊張をもたらしたインドとパキスタンでさえ、今や実験を止めている。21世紀になっても核実験を続けているのは北朝鮮だけで、中国の説得などこの国は歯牙にもかけていないのだ。もはや従来の対策では北朝鮮の暴走を止める効果は期待できない。このまま北朝鮮を増長させると、今年に入ってからアメリカとサウジアラビアとの衝突を繰り返しているイランも同様に振る舞いかねない。
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