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2015-12-24 09:13

ケリー長官による米国外交のスタイル

川上 高司  拓殖大学教授
 オバマ政権2期目でチャック・ヘーゲルが国防長官に就任したとき、彼はアメリカ外交は「ケリーの時代になる」と明言した。その言葉どおりケリー長官は精力的に世界を飛び回り、2015年はまさに「ケリーの年」と呼べる外交を展開した。

 オバマ大統領はトマス・ジェファーソンを信奉する孤立主義者である。国際社会には関与を低めもっぱらアメリカ国内の政治を重視する。一方のケリーは、ウッドロー・ウイルソンを信奉する国際協調主義者である。ケリーが最も理想とするのはウイルソンが提唱した「国連」である。もっともさすがに、彼もそれが「究極の理想」であると考えている。それでも目指したいのは「理想の国連」だ。

 この根本的な違いが外交スタイルにもはっきり現れている。オバマ大統領は外交においても他国の指導者との信頼関係は不要だと考えている。求めるものは国益であり、国益が実現するならば敵とも対話するが、実利がなければしない。疑い深く感情に流されない。まさに冷徹であり交渉相手としては手強い。ケリーは個人的な関係が重要だと考えており、まずは交渉相手を知り信頼関係を構築する。そして対話を重ねていけば歩み寄れる、外交の最後の砦はこの信頼関係だと信じていている。

 だからこそケリーは世界中を飛び回り対話をし、交渉を続ける。ときとして向こう見ずで猪突猛進も厭わない「熱い外交官」の原動力は 「話せばわかる」なのである。オバマ大統領はケリーの外交交渉がどこに辿り着くのかを突き詰めず、口を挟むことがない。全く逆のスタイルを持つケリーを信頼し外交をすべて任せているのだ。オバマとケリーに残された時間は1年半。ケリーは悲願であるイスラエルとパレスチナ問題を解決しシリアの内戦を終わらせるために、全身全霊を傾けて世界を飛び回る日々が続くのだろう。
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