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2015-11-20 14:59
日本は、脆弱性を抱える米中の動きに注意せよ
中山 太郎
非営利団体非常勤職員
さる11月17日にAPECの閣僚会議が終了し、仏でのテロ事件を受け、テロの対策強化などを盛り込んだ共同声明が採択された。これに関連して、一言する。テロに関しての報道は多いが、19日のVOAが、中国とノルウェーが提携して、自国民を殺害したISの軍事グループを非難したと伝えているのは興味深い。2010年のノーベル平和賞に中国の人権活動家の劉暁波氏が決まった時、中国政府はノルウェーに激怒し、ノルウェー駐在の欧米などの各国大使館へ式典ボイコットを呼びかけたり、中国での国際会議への参加拒否し、ボンデビック元首相への入国を拒否したことは有名である。あまつさえ、同国からのサーモンなどの魚介類を中国港湾で滞留させて腐らせるなどの嫌がらせを行ったことなどは記憶にまだあるからだ。(日本も今まで同じような目にあってきたし、これからも行われるだろうことは覚悟しなければならない。)
2001年9月11日の米へのイスラム過激派によるテロの際、当時米政府の招きで滞在中の中国人ジャーナリスト一行が、テレビでこの光景を見て、皆手を叩いて喜んだ。これは、この招聘に従事した米国人から聞いた話である。しかし、当時のブッシュ政権は、外交の金言、目前の敵以外とも場合により手を組め、ということで中国と手を組んだ。中国の新疆ウイグル自治区での弾圧に目をつぶったのだ。そして米中は、情報交換の他、アフガンへの基地となる中央アジアにおける米空軍への基地貸与にも中国の暗黙の了解を得たのである。米のお墨付きを得た中国は、その後大手を振って、イスラム教徒への弾圧を繰り返した。本年前半の安倍総理の米議会での演説の1週間後、米をはじめとする海外の日本研究(中国その他のアジアを含む)の学者187名による声明が行われたが、この学者の中には、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」のエズラ・ヴォーゲルや「敗北を抱きしめて」のジョン・ダワーなど、国際的にも著名で米政府の対アジア政策へも影響力のある学者が含まれていた。
彼らの声明内容を一言で述べると、「日本の総理は歴史修正主義者で、彼の言動は人権を無視している。日本政府が、慰安婦問題の記述を改めてくれと米の出版社や著者などに働きかけたのは、学問への侵害だ」ということだ。その学者の一人が来日した際に「いくらなんでも、今の中国の人権無視を見ないで、日本だけを責めるのは、あまりにもひどい」と伝えたところ、彼は「その通りだ。しかし、世界は力ある方、声の上げ方のうまい方につくのだ。現実問題として、今の米の学者たちは、中国問題で飯を食っているものが多い。中国政府に睨まれて、ビザを拒否されたら悲惨なことになる。事実、自分の知り合いの研究者は、ウイグル、チベット問題での発言を睨まれ、中国での現地調査ができず、学問の進展に困難をきたしている。日本は、民主主義の国なので、少しぐらい悪口を言っても大丈夫なのだ」と半ば冗談めかしながら答えた。
彼によると、ワシントンD.C.で毎年開かれる桜祭り(National Cherry Blossom Festival)、みなさんがご存知のように1912年当時の東京市長の尾崎行雄が日米友好親善促進のため苗木を贈ったものだが、この祭りについて最近の中国側は、日米の外交筋に「自分たちも参加させろ」、「この際、アジア祭りと名前を変えよう」などと働きかけをしているそうだ。彼は、ため息をつきながら、今のワシントンで、日本の意見支持が10名だとすると、中国の意見支持は、その倍はいて、その数は、ますます大きくなっているとのことだ。米中双方とも脆弱性を抱える中、両国の動きには十分な注意が必要だし、我が国対応も慎重を極めなければならないだろう。最後に、最近の中国外交部の劉次官の公式場面での発言「南シナ海・南沙諸島での埋め立て工事が終了した」は、気になるところである。
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