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2015-10-27 05:51
小沢が「打倒安倍」で「悪魔の盟約」に暗躍
杉浦 正章
政治評論家
生活の党となんとかの共同代表・小沢一郎の“生き強さ”にはほとほとあきれる。非自民・非共産で細川護煕政権を造ったのは記憶に新しいが、今度はその「非共産」であるはずの共産党までたらしこんで、非自民・非公明の「国民連合政府」の構想を打ち出させ、暗躍している。この結果民主党は左右の対立が激化する様相を示し、右派の元外相・松本剛明が10月27日離党する。民主党代表・岡田克也は小沢に追い込まれた形だ。その策略の基本はすべてが選挙優先の数合わせだ。さすがの細川も「自民党を引きずり下ろすためには悪魔とでも手を結ぶ」と述べたものの、共産党だけは敬遠した。ところが、小沢はなりふり構わず最後に残った「悪魔」である共産党とも手を結ぼうとしている。小沢最後の仕掛けが「打倒安倍政権」での「悪魔の盟約」である。
その手始めがさきの岩手県知事選だ。8月20日告示されたものの、現職の達増拓也以外に立候補の届け出がなく、無投票で3選を決め、一強自民党を屈辱の「不戦敗」に追い込んだ。これには6月17日の小沢と共産党委員長・志位和夫の選挙協力での合意がプラスに作用している。以後小沢と志位の会談は6~7回行われている。共産党は宮城県議選でも躍進しており、党勢拡大の流れが止まらない。小沢が目を付けたのは、この集票能力だ。小沢は安保法制の反対デモでも、志位にすり寄って、手をつないでバンザイをしているが、利用できるものはなりふり構わず利用する精神構造にある。そこには恥も、外聞もなく「力」の根源を味方につけようとする「政治屋」の面目躍如が感じられる。共産党と小沢は、もともと不倶戴天の敵であった。例えば「しんぶん赤旗」は保守の堕落の象徴として小沢を攻撃してきた。2010年4月28日の赤旗社説は、検察審査会の「小沢氏起訴相当」との議決に「政治的道義的責任は、もはや逃れることはできません」と批判している。
ところが最近は、安保法制反対の国会前のデモで小沢が演説すると、「大きな拍手が起きた」と報ずるという変わり方だ。この変容ぶりの背景は、どこにあるかだが、間違いなく志位が選挙での躍進に有頂天となっている姿が浮かぶ。共産党も「小沢小悪魔」の誘惑に応じて、「政局」への参画を目指し始めたのだ。もっとも共産党にしてみれば、真面目な党員は志位の小沢大接近に不満を内在させているといわれ、党内で何が起きるか分からない問題を抱えている。小沢が狙うのは言うまでもなく共産党の集票能力だ。2012年の衆院選は、小選挙区470万票、比例区370万票であったものが、2014年には小選挙区700万票、比例区600万票と大幅に拡大しているのだ。1選挙区当たり平均2万4000票の集票能力は、創価学会の集票能力に迫るものまで成長したのである。小沢にしてみれば、この票がかつて自分が目もくれなかった革命政党の票であろうが何であろうが、数さえあればよいのである。これは、鄧小平の現実主義政治信条「白猫黒猫論」とそっくりである。「白猫であれ黒猫であれ、鼠を捕る猫が良い猫である」というわけだ。
共産党の集票力を分析すると、来年夏の参院選で選挙協力が実現すれば、新たに1人区となる選挙区を含め、七つの1人区で野党候補が自民を逆転することが分かった。この共産党の「毒まんじゅう」が民主党代表・岡田克也にとっては垂ぜんの的であることはいうまでもない。しかし、焦点の安保法について岡田は「部分修正」であるのに対し、共産党は「安保関連法廃止」の一点で暫定連立政権の樹立を目指しており、大きな食い違いがある。ここに岡田のジレンマが発生する。節操もなく「共産党票」に尻尾を振るか、民主党の政治路線を堅持するかである。まさに岡田と志位は同床異夢の関係にあるのだ。折から、安保法制ではなりを潜めてきた右派が、強く反発し始めた。元防衛副大臣・長島昭久はブログで、岡田・志位の大接近を「いつからこんな民主党に成り下がったのか」と批判した。松本の離党の最大の理由も岡田の共産党への接近にあるといわれる。
冒頭述べたように、小沢の投げた球は民主党を共産党に結びつける意図に加えて、民主党内への揺さぶりも狙ったものである。こうした動きに対して、政府・与党は公明党がいきり立っている。票田が重なるうえに共産主義は基本的には宗教を否定しており、創価学会とは相いれないからだ。政調会長・石田祝稔は25日のNHKで「50年も60年も自衛隊は違憲だとか、安保廃棄だと言ってきたのに、それを脇に置いて選挙を一緒にやろうとするのはおかしい」と噛みついた。これに対して書記局長・山下芳生は「公明党は平和の党の看板を戦争の党と書き直せ」とあおることしきりだ。官房長官・菅義偉が「選挙目当て」と“野合を批判”すれば、志位が「これを『選挙目当て』としか批判できないの?政府の知的貧困は深刻です」と反論すると言った具合で、ボルテージは上がる一方だ。もっともかつて1970年代に共産党が躍進し、自民党副総裁・川島正次郎が「70年代は自共対決の時代になる」と予言したことが、かえって共産党の存在を際立たせる効果を生じたことがある。政府・与党の対決姿勢はほどほどにした方がよい。黙っていて、来年の参院選で野党共闘が進みそうなら、安倍にはダブル選挙で野党共闘をくしゃくしゃにして、連合政府構想をぶち壊してしまう手がある。
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