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2015-10-24 15:45
腐敗防止装置の欠落からみる国連の制度的欠陥
倉西 雅子
政治学者
国連改革については、国連安保理において常任理事国に認められている事実上の「拒否権」の問題に関心が集中しがちです。しかしながら、国連の制度的欠陥は、拒否権問題に限定されているわけではありません。現行の国連制度が抱える問題点の一つは、組織的な腐敗防止のための仕組みが欠落していることです。
今月6日、米連邦検察は、カリブ海の島国アンティグア・バーブーダ出身のジョン・アッシュ元国連総会議長を逮捕したと公表しました。合わせて、贈賄側のマカオに拠点を置く中国人不動産事業者等4人も訴追されたそうです。汚職の構図は、事業者等から130万ドルを超える賄賂を受け取ったアッシュ元国連総会議長が、マカオにおける国連関連施設の建設を国連の事務総長に進言するというものであり、公共事業における汚職の典型的なパターンです。潘事務総長による出身国企業との不適切な癒着は、これまでにも再三指摘されてきましたが、この事件での事務総長の関与は、今のところ、定かではありません。
しかしながら、国連の事業が、巨額の利権を生み出していることは想像に難くありません。この事件から見えてくるのは、国連は、公共事業の発注に際して公平・公正な公開入札制度を導入しておらず、賄賂が横行する環境にあること、そして、国連の役員や職員の不正行為をチェックする独自のシステムが存在していないことです。今回の事件では、国連本部が設置されているアメリカの検察当局が動いたことで辛くも汚職が摘発されましたが、アメリカが見過ごすとしますと、国連は「汚職天国」となりかねないのです。外交官の不逮捕特権もありますし、何処からも罪を問われないのですから。
腐敗体質を温存させたのでは、公共事業の利権にまつわる汚職に留まらず、国際社会の平和と安全、あるいは、全加盟国に影響を与える重要な決定に際してさえ、「賄賂」が物を言う可能性も否定はできません。常任理事国である中国をはじめ、「賄賂文化」が慣習的に蔓延っている国も少なくないからです。国連の健全化と本来の機能を回復・発展させるためには、腐敗防止の問題は、国連改革の課題として避けて通れないのではないかと思うのです。
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