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2015-10-14 21:17
迷走するアメリカのシリア政策
川上 高司
拓殖大学教授
10月9日、国防総省は、5億ドルの予算をつぎ込んだ新シリア軍(New Syrian Force:NSF)創設のプログラムを正式に中止すると発表した。これは、アメリカがISIS(イスラム国)と闘うための軍を新たに創設し訓練してシリアに送り込むというものだ。7月には実際に最初のNSF部隊として54人をシリアに送り込んだ。
だがわずか2か月後の9月には、その部隊の人数は5人しか確認できず、さらに米軍が提供した戦闘車両などの装備の25%がイスラム過激派グループのアル・ヌスラの手に渡ったことが確認された。それでもアメリカはさらに70人のNSF部隊をシリアに送った。その装備のほとんどが過激派グループに渡ってしまったようである。そしてようやくこのNSFプログラムは無駄だったと判断し中止に至った。そのかわりアメリカは、クルド人部隊やシリアのアラブ人反政府グループに軍事支援をすることに決定した。それも司令官クラスだけを訓練するという。そのほうがより実効性が高いと国防総省は考えている。
戦闘の現場では、NSFプログラムは不評だった。シリア自由軍など既存のグループにしてみれば、アメリカの支援を受けたグループだけがISISに対抗できる力を持つことができ、それはアサド政権後の権力バランスにも影響することを意味するからである。反政府側も決して一枚岩ではない。だからこそ、内戦が長期化しているという現実を見落としてはならないだろう。
ロシアが空爆に参戦し、アメリカはシリア国内に武器や軍の装備品を大量に持ち込む。それはまるで1980年代のアフガニスタンの再現のようである。そしてアフガニスタンの現状を鑑みれば、その行き着く先は容易に想像できる。いまこそ政治的外交的な取り組みが必要であろう。
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