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2015-03-26 17:06
アサド大統領に対して現実的にならざるを得ないアメリカ
川上 高司
拓殖大学教授
ケリー国務長官が15日のアメリカCBSニュースのインタビューで、シリアの内戦が4年目を迎えるにあたり、「政治的な問題について交渉の余地あり」と爆弾発言をした。この発言が波紋を呼んでいるのは、アサド大統領の退陣を求めているアメリカがアサド大統領の存続を認める方針に転換したのではないかとも取れるからである。この発言を受けてアサド大統領はすかさず、「国際社会の変化は歓迎する」とのコメントを出し、「国際社会が動き出すのを待ち望んでいる」と前向きな姿勢を示している。
アメリカの態度が少しではあるが明白に変化を見せ始めたのは、ISISの存在がある。イラクからシリアにわたって勢力を伸ばし国際的な脅威となっているISISを押さえ中東を安定させるにはアサド大統領の力が必要であること、アメリカが派兵を回避する一番現実的な方針はアサド政権を存続させることであるとオバマ政権が認めて動きだしたのである。
国内の問題も無視できない。共和党がイランの指導者にオバマ政権の外交交渉を否定するという手紙を送ったが、オバマ政権にとってイランとの関係が悪化することは絶対に避けたい。イランとの関係が良好なうちにシリア問題を解決したいという気持ちになるのは当然だろう。さらにイランの協力はISISとの闘いにおいてももはや不可欠である。
国務省は「ケリー長官はアサド大統領と交渉するとは言っていない」とコメントして、波紋を鎮めようと躍起になっている。フランスは「我が国の立場は変わらない」、トルコは「アサドが問題の元凶」との厳しい立場を明確にした。ケリー長官はインタビューで、「いつかは折り合わなくてはならない」と前進する姿勢をはっきりと示した。結果を出すためならアサド大統領とも交渉する、冷徹な現実主義者であるオバマ大統領の真価が発揮されようとしている。
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