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2015-03-19 06:30
住民投票は中央政界への波及必至
杉浦 正章
政治評論家
大阪市をなくし、東京23区のような特別区に再編する大阪都構想がいよいよ本格的に動き始めた。5月17日の住民投票の結果は中央政界を巻き込んだ動きを誘発しそうだ。構想推進派が勝てば、維新の大阪市長・橋下徹が勢いづき、国政選挙出馬の動きに出る可能性が強い。負ければ橋下は「政治家を引退する」と発言しており、その性格から言って本当に引退する公算が強い。その場合維新が分裂傾向をたどる可能性がある。また勝った場合でも、再編構想は実施に移されるが、「大阪都」の名称実現には法改正か立法措置が必要となり、名前どおりに実現するかは予断を許さない。大阪が東京並みの大都市に変ぼうすることを前提にした橋本構想は、当初から誇大妄想というか幻想というか、うさんくささがつきまとっていたが、大阪の有権者にはお笑いタレントを府知事に選ぶような“軽さ”がある。公明党支持母体の創価学会の動向がカギを握っているようだが、予断を許さない。
橋下が都構想推進に当たって「大阪を東京に匹敵する大都市にしたい」という発想は悪いものではないが、名前がいけない。東京都や京都は全く違和感がないが、多くの国民が「大阪都」に対しては違和感を感ずるのはなぜだろうか。まず日本人の常識から見れば、都とは昔から皇居のある土地を指した。「京の都(みやこ)」は皇居があったからであり、「奈良の都」も然りだ。皇居が移れば「遷都」となるのである。さらに「都」と名付けて機構を改革しただけで経済規模で4倍の開きがある東京並みに、衰退した大阪が復活するような主張はどうしてもいただけない。現在の一極集中が二極集中になると見るのも幻覚だ。東京への一極集中と繁栄の仕組みは、政治、経済、文化などの複合的な要素に裏打ちされているのであり、大阪とは表現は悪いが格が違うのである。しかし、住民投票が中央の政治に与えるインパクトは無視できないものとなろう。まず勝った場合だが、橋下は市長選に出馬して、都構想にまい進したい気持ちを表明しているが、法的措置が伴う以上自らが国政選挙に打って出ることも当然視野に入っているものとみられる。来年の参院選挙なら参院への出馬、衆参同日選挙なら衆院への出馬の可能性がある。
しかし、都構想を掲げて国政選挙に勝てるかというと話は別である。世論調査でも構想に関心を持つ有権者は近畿圏に限定されており、住民投票の勝利で1年後の国政選挙に弾みがつくことはあり得ないと見るべきだろう。新自由クラブの例もあるように、いったんブームが去った中小政党が、再びブームを巻き起こすのは極めて困難だ。「風」が吹き続けることはないのだ。ただ参院選で勝利して憲法改正を目指す首相・安倍晋三にしてみれば衆院に続き参院でも改憲発議に必要な3分の2の議席を与党だけで確保できればよいが、維新の動向が左右する可能性も否定出来ない。だから安倍は、もともと親密な関係にある橋下に対して都構想に前向きな感触を与えているのである。だが安倍にしてみれば、「都構想絶対阻止」を唱える自民党大阪府連の意向を全く無視して都構想を推進するわけにも行かない。ただでさえ府連には「首相が後ろから鉄砲を撃っては困る」という不満の声が出始めているのである。だから官房長官・菅義偉も3月18日、「官邸は住民投票を注視していくことに変わりはない」と、のめり込みを避ける発言をしているのだ。
一方で住民投票に敗れた場合にどうなるかだが、冒頭述べたように橋下は政治家を辞める公算が大きい。その場合は外様の維新の党代表・江田憲司では党内をまとめきれるかどうかは、疑問だ。むしろ保守系とリベラル系に分裂し、保守系は自民党に吸収され、リベラル系は民主党に移るような分裂傾向をたどる可能性がある。いずれにしても215万人の住民投票は史上最大級であり、多数派工作は統一地方選挙とも表裏一体で進むことが予想される。カギを握るのは公明党の支持母体の創価学会票だが、これまでのところ同学会は自主投票を決めている。しかし最終段階で組織的な動きが出てこないとは限らない。
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