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2015-03-13 06:40
「小泉しゅうと」の手に負えぬ“場ふさがり”
杉浦 正章
政治評論家
しゅうと(姑または舅)は若夫婦にとってじゃまになるから「しゅうとの場ふさがり」というが、長寿社会を反映して政界でも「場ふさがり」が盛んだ。なかでも「しゅうとは年が寄るほどひがむ」のを如実にあらわしているのが、元首相・小泉純一郎の発言だ。最近では原発批判にかこつけて、首相・安倍晋三がオリンピックの東京招致を実現したことまでやっかんだような発言をしている。欧米の政界では、引退した大統領や首相は政治に直接的に口を出すケースは珍しい。日本でも、退役した社長は一部例外を除いて、現役社長の会社運営に口を出さないのが普通だ。ところが日本の政界は、口を出す元首相が圧倒的に多い。1983年の中曽根康弘から過去30年で、生存している首相経験者は、 中曽根康弘、海部俊樹、羽田孜、細川護熙、村山富市、森喜朗、小泉純一郎、福田康夫、麻生太郎、鳩山由紀夫、菅直人、野田佳彦だ。様々なる発言からこの“しゅうと度”を、少ない方から多い方にAからDまでのランクで並べると、Aが中曽根、海部、羽田、福田、麻生、Bが森、野田、Cが細川、村山、菅、Dが小泉、Eが鳩山といった印象になる。CからDまでは、総じて国のためより自己顕示の傾向が強く、老醜をさらしてみっともない。
鳩山はもはや「国賊」(元防衛相・小野寺五典)並みであり、紳士的な官房長官・菅義偉が「馬鹿馬鹿しい」とばかりにコメントを拒否するくらいひどいから、これは神社の社格で言えば別格官幣大社だ。それに勝るとも劣らないのが、愛弟子であるはずの安倍の足を引っ張り続ける小泉だ。最近は原発を巡って科学的な無知と、事実誤認、我田引水そして嫉妬心を臆面もなくさらけ出して、恥じるところを知らない。最近の発言における嫉妬心とはどこかと言えば、3月11日の発言で「汚染水も『コントロールされている』と誰かが言っていたが、全然されていない」の部分だ。これは明らかにアルゼンチンのブエノスアイレスで開かれたIOC総会で安倍が行った最終プレゼンテーションを指している。安倍は「東京電力福島第1原発について私は皆さんに約束する。状況はコントロールされている。決して東京にダメージを与えない」と発言、招致に成功した。小泉の潜在意識の中にはこれが嫉妬心として存在し続けて来て、ぽろりと出たのであろう。事実誤認もいいところである。この発言について菅は「福島第一原発の港湾外の放射性物質濃度は、法令で定める『告示濃度限度』に比べ、十分低いままだ。IAEA(国際原子力機関)からも、『WHO(世界保健機関)の飲料水ガイドラインの範囲内にあり、公衆の安全は確保されている』と評価をいただいている」と述べた。そのうえで、菅は「汚染水の影響は港湾内に完全にブロックされており、状況はコントロールされている」と、小泉発言を完全に否定した。この結果、小泉の感情むき出し発言はあえない最期を遂げたのだ。
さらに小泉は「核のゴミ処分場のあてもないのに原発を勧める方がよほど無責任だ」と述べたが、自らが首相在任時には原発稼働を推進し、核のゴミ処分場などという問題は頭の片隅にもなかったことを棚に上げしているのである。スーダラ節もびっくりの無責任さだ。小泉は「政府が原発ゼロにかじを切れば、必ず自然エネルギーで成長できる国になる」とも発言した。ここで強調したいのは、小泉の発言は全て「直感」だけで、政権運営した時代への老人性ノスタルジアが感じられることだ。なぜなら「必ず自然エネルギーで成長できる国になる」の根拠を全く示さないからだ。太陽エネルギー政策を推進したスペインが財政破たんに陥り、原発ゼロを公約したメルケルが依然稼働をし続けているのは、自然エネルギーが全く見通せないからだ。日本でも現在2%がせいぜいであり、原発を稼働せず自然エネルギーを無秩序に増やせば、コストがかかり電気料金は2倍に高騰する。家計や産業がこれに耐えられるだろうか。小泉は自然エネルギーで可能というなら、具体的な工程表を示せ。国家に死活的なエネルギー政策はお経のように唱えれば良いものではない。
そして小泉の視点が全く欠けているのが、地球温暖化問題である。地球温暖化による気候大変動で日本ばかりか世界中で大災害が続出している。リベラルな「ニューヨークタイムズ」紙ですら、原発稼働による温暖化阻止を主張しているではないか。原発を語るなら地球温暖化を語らなければならないのは言うまでもない。中国に至っては運転中が22基。現在建設中がなんと27基で、全部海岸寄りに作られている。小泉は中国に行って「危険な原発は製造中止にせよ」と訴えたらどうか。原発反対で都知事選に細川護煕を担いで大敗退。国政選挙では過去3回全てが、原発再稼働がテーマになり、推進を唱える自民党が圧勝したではないか。いくら聴衆が集まるのが嬉しいからと言って、国の政治の根幹を揺るがすような、無責任で、根拠のない発言を、かつて首相を経験したほどのものが繰り返すべきではない。政府はもたもたせずに早期に原発を再稼働し、将来は新設も視野に入れた、ベストミックス政策を打ち出すべきだ。安倍も「舅の門と麦畑は踏むほどよい」というから、昨12日夜、歴代首相経験者6人と会食したのはよいことだ。中曽根康弘、海部俊樹、森喜朗、小泉純一郎、福田康夫、麻生太郎が出席したが、小泉の立場がどうであったか興味深い。おそらく原発では孤立したのではないか。
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