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2006-11-15 09:52
中国の新たな外交方式-フォーラム(論壇)外交-
舛島 貞
大学助教授
中華人民共和国の外交方式として、かつて最も重視されたものの一つに「友好(人士)外交」があった。昨今は、中聯部の復権などがあるにしても、友好外交が以前ほどの重要性をもつことはない。「対外工作」のあり方も随分とかわってきた。対外工作、あるいは外交方式として最近急浮上したのが、フォーラム外交である。11月10日付けの滝田賢治氏の投稿「中国外交は21世紀のビスマルク外交か」でも触れられていたとおり、11月初旬にはアフリカ首脳が中国に集まり、またASEANとの対話関係成立15周年記念サミットもほぼ同時期におこなわれたためニュース性はいっそう高まった。このアフリカ首脳との会議は、「中非合作論壇」という 名義の下に開催されている。
中国のフォーラム(論壇)外交というのは、中国とある地域の政治家、官僚、財界人、学者などが多角的に参加し、双方の要望、疑問、懸念などをざっくばらんにぶつけあい、相手地域/国々の中国への姿勢を把握し、解決できる問題、かなえられる要望はかなえる/かなえてもらうというものである。中国は、アフリカのみならず、ラテンアメリカなどとも積極的にこの論壇を開催し、日本ともしばしば開催している。台湾の国立中興大学で国際関係論を教えている蔡東傑助教授は、このフォーラム外交もまた、昨今の中国のソフトパワー外交の一環だと指摘している。全方位外交の時代にあって、こういったフォーラム外交が、単なる予算消化のための一回限りのイヴェントではなく、実質的な意味合いをもってきている。ASEAN、あるいは東アジア共同体構想に含まれる国々とも、中国がフォーラム外交を展開していることは言うまでもない。中国とASEANについては、FTAが話題になることが多いが、こうしたソフトの面があることも看過してはならない。
10月31日、広西の南寧に集ったASEAN首脳の前で温家宝首相は、「共同的需要、共同的未来」を唱え、貿易規模の拡大、投資協力の積極化、経済技術協力レヴェルの向上、中国・ASEAN自由貿易区の建設、メコン川流域など諸地域の開発協力の推進などを具体的に提案した。
東アジア共同体構想におけるイニシアティブの問題を考えるとき、中国が平和的に台頭するのか、あるいは覇権主義をとるのかという、中国外交の性質をめぐる二分法に関連付けられて考えられることが多い。だが、平和的な手段、また国際主義は、必ずしもナショナリズムやイニシアティブの獲得と無関係であるのではない。平和的な手段、ソフトパワーに属する方法によって、国際社会におけるイニシアティブを得ていくことがあることも想定しておかねばならないだろう。
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