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2015-02-13 11:47
ギリシャ議会総選挙結果から見えたユーロ残留への道
田村 秀男
ジャーナリスト
先のギリシャ議会総選挙の結果、野党の急進左派連合が政権の座についた。新政権は債務救済を受ける条件である緊縮財政について撤回を迫る構えだ。欧州連合(EU)などとの交渉が決裂すれば、欧州共通通貨「ユーロ」圏からの離脱騒ぎに発展しようが、実際にはどうか。そもそも、現代ギリシャという国は1826年の建国以来、デフォルト常習、しかも放漫財政国である。そのことはユーロ中軸国もわかっていたはずだ。ところが、そのギリシャをユーロに加盟させることに最も熱心だったのが緊縮好きなドイツである。理由はギリシャ神話にさかのぼる。主神たる全知全能の神々の王ゼウスが、フェニキアの王女、エウロパ(EUROPA)姫を見初め、牛に化けて誘拐し、ギリシャ北部からドナウ川下流域の上空を連れて回った。その神話からヨーロッパ(EUROPE)、ユーロ(EURO)という呼称が生まれた。
かの独裁者ヒトラーはベルリン五輪(1936年)ではギリシャ・オリンピアで聖火を採火し、五輪史上初めて聖火リレーを開始した。オリンピアを出発して、ドナウ川流域諸国を経由し、ドイツ国内へ入った。ドイツこそはギリシャ文明の正当な後継者、終着点だと誇示したのである。欧州共通通貨ユーロには、ドルや円など特定の国家を代表する通貨のような「顔」がない。ならば、アイデンティティー確保のため、ギリシャを仲間に入れるしかない。
欧州中央銀行(ECB)は2010年のギリシャ危機勃発後は、金融支援、債務減免などで時間稼ぎし、ギリシャを何とかつなぎ止めてきた。主要ユーロ加盟国別の長期国債利回りの推移をみると、幸い、ギリシャ以外の問題国の国債は、このところ安定している。ギリシャ問題を除けば、量的緩和政策でユーロ不安は解決の方向に向かうかもしれない。ECBはギリシャ国債も条件付きで購入する構えだが、新政権がどうしても緊縮財政を拒否するなら、ドイツ中心のECBはどうするのか。ECBがそれを口実にギリシャに引導を渡すのか。
ギリシャの失業率は25%を超え、若者のそれは実に50%に達する。緊縮財政には政治的にも社会的にも耐えられないはずだ。ギリシャ離脱の道しかないように見える。ギリシャはデフォルト(債務不履行)宣言し、本来の自国通貨「ドラクマ」に回帰すれば、通貨安政策に踏み切ることができるのだが、現実は甘くはない。高インフレは不可避だし、外部からの新規借り入れも途絶えかねないので、社会経済の混乱はもっと深刻化するかもしれない。他方、ドイツもギリシャのいないユーロでぽっかりと空く統一通貨の精神的アイデンティティーを何によって埋め合わすだろうか。ギリシャ抜きのユーロはただの紙切れだ。ギリシャ残留の道はまだ捨てがたい。
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