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2014-12-18 06:53
選挙圧勝は日米同盟深化と対中抑制に資する
杉浦 正章
政治評論家
総選挙の結果を極東情勢と照らし合わせて見た場合、紛れもなく日米同盟の深化と対中抑止力の強化に資する傾向を示した。自民党は今後の日米安保体制の要となる集団的自衛権の行使容認を選挙公約に掲げて圧勝を果たしたのであり、反対派が見る影もなき惨敗となったことは、アベノミクスと共に外交・安保も「この道しかない」流れを導き出したのだ。大統領・オバマが総選挙結果について安倍にわざわざ電話して「衆院選の目覚ましい勝利に感銘を受けており、称賛したい。引き続きシンゾウと一緒に働くことを楽しみにしている」と述べたのは、単なる外交辞令ではあるまい。総選挙結果は、自らのリバランス(再均衡)政策にとって安倍の路線が不可欠かつ信頼の置けるものとなった事を意味するからだ。12月17日の電話会談でオバマは「近年、日本の政治は不安定だったが、国民が安倍政権への信任を示したことは、日本のみならず米国にとっても重要だ」と述べた。オバマにしてみれば、安倍への国民の信任は対中抑止力に大きくプラスに作用することであり、安倍のリーダーシップが強化されたことは、日米2国間関係にもプラスの作用をもたらすという打算があるのだ。
選挙結果でとりわけ米国が重視しているのは日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の改定と環太平洋経済連携協定(TPP)交渉へのプラス効果だ。ガイドラインについては年内合意の予定だった改訂方針が来年夏の集団的自衛権の行使に関する安保法制実現後に延期されることになったが、これはかねてから予想していたとおりだ。なぜなら法律が実現しないうちにガイドラインを先行させるのはどう見ても本末転倒だからだ。そもそも昨年末の日米外相、防衛相による2+2で今年末と決めたのは、秋の臨時国会での法制化を前提としていたからだ。これが統一地方選後に延期になれば、日米合意も延期にならざるを得ないのだ。さらに加えて延期には重要ポイントがある。それは沖縄事情である。知事選で普天間移転推進の仲井真弘多が敗北し、「沖縄ポピュリズム」の権化のような知事が誕生してしまったことだ。翁長雄志は極左政党の基盤の上に乗って、「あらゆる手法を駆使して辺野古に新基地はつくらせない」と主張しており、政府を「日本政府」と呼ぶ異常さだ。沖縄をまるで「独立国」化しようとしているとしか思えない愚かさだが、政府としては乗りかかった辺野古基地建設を推進するしかない。
ガイドラインの中核となるべき問題であり、改訂までにできる限り基地建設の既成事実を積み上げる必要があるのだ。誰が見ても普天間固定化は避けるべきであり、海兵隊のグアム移転を推進するためにも辺野古移転を粛々と実現させるべきなのだ。政府の路線は沖縄100年の計のためにも正しい。躊躇せずどんどん建設を進めるべきである。一方TPPに関しても、米政府内に安倍のリーダーシップが強化されたことで交渉妥結に向けての流れが速まるという期待感が強まっている。総選挙の公約ではTPPについて「国益にかなう最善の道を追求する」と妥結に前向きな姿勢を打ち出している。焦点は農産物や自動車を巡る米国との関税協議だ。特に牛・豚肉や乳製品など農産物の重要5項目を巡って膠着状態が続いている。これまでは経済財政担当相・甘利明が一手に引きうけてきたが、安倍が妥結に向けての高度の政治決断を下すべき時期が迫っている感じが濃厚だ。安倍が前面に出る必要が生じて来よう。
さらに日米関係にとって重要なのは、ニューヨークタイムズなど米国のリベラル系マスコミ対策である。米外交当局者などはNYタイムズの記事を見て発言する習癖があり、ワシントンの世論形成への影響力は絶大だ。例えば同紙は12月2日、朝日新聞が今年8月に慰安婦問題の記事を撤回して以来、安倍晋三政権を含む「右派勢力の(朝日新聞)攻撃」が強まっているとする記事を掲載した。これは事実誤認どころか高級紙にあってはならない、事実の歪曲である。安倍が国会で述べたように「安倍政権打倒は朝日の社是」なのであり、攻撃を受けているのは安倍の側だ。官房副長官・世耕弘成が「安倍政権が朝日新聞やその記者を攻撃している事実は全くない。日本政府が求めていることは、正しい事実認識に基づいて、日本の取り組みに国際社会から正当な評価を受けることだ」と反論したのは当然だ。抜かりはないだろうが、こういう記事が出たらすぐに反論を送り、掲載を要求すべきであろう。また社長宛に抗議文書を出すべきだ。同紙は歴代エキセントリックな東京特派員が多いが、その都度正確さを要求して、更迭につなげることが肝心だ。
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