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2014-12-11 19:21
反省も対案もない民主党
田村 秀男
ジャーナリスト
衆院選は本格的な選挙戦に突入した。野党に先んじて「アベノミクス」を争点にした安倍晋三首相に対して野党がどこまで巻き返すか。筆者は、興味津々で1日に東京・内幸町の日本記者クラブで開かれた8党首の討論会を傍聴したが、拍子抜けした。野党側はアベノミクスに代わる日本再生案を示せなかったからだ。野党第1党民主党の致命的な欠陥は、公約など選挙準備不足によるのではない。政権の座にある当時、財務官僚の言うがままになって、デフレ不況を深刻化させたことへの無反省だ。安倍首相は、アベノミクスによって企業収益増、賃上げ、消費増の好循環を実現すると強調した。2017年4月という期限を設けて、経済を安定成長軌道に乗せ、税の自然増収を実現し、消費増税なしで財政再建を目指すのを「国家の意思だ」と言い切った。
民主党の海江田万里代表の論点は、「アベノミクスの失敗」である。2度にわたる異次元金融緩和がもたらす円安は物価の上昇を招き、所得格差を生み、生活者や中小企業を苦しめていると批判した。確かに、アベノミクスがまんべんなく国内にその恩恵が行き渡っているわけではない。だが、民主党政権は超円高・デフレを放置して企業の国際競争力を失わせ、雇用機会を喪失し、家計消費を萎縮させ、税収を減らしてきた。海江田氏は異次元緩和に代わる「柔軟な金融政策」を提起したが、その言葉の響きは白川方明(まさあき)総裁当時の日銀の小出し緩和によるデフレ容認策そのものである。
菅直人、野田佳彦両氏は首相当時、財務官僚とその御用学者に洗脳され、「消費税増税すれば景気はむしろ良くなる」と信じていた。野田前首相は、自公両党を巻き込んで消費税増税法案を通した。増税の結果は、景気の急激な落ち込みだ。すると、民主党はさっさと「再増税の環境にない」と延期容認に回る始末だ。維新の党の江田憲司共同代表は、脱デフレによる税収増と公務員給与の2割カットなどによる歳出削減による5兆円の財源創出をぶち上げた。その通り。だが、今回の衆院選での民主党接近について突っ込まれると「民主党と連携はしないが、自然に棲み分ける」(江田氏)とは、少々聞き苦しい。民主党は国と地方の公務員労組が主力の連合の支援に依存している。
日本共産党の志位和夫委員長は、「1997年度に続いて2度も消費税増税で経済政策を失敗したと素直に認めるべきだ」と安倍首相に迫った。筆者は志位氏とは基本的な考え方は違うが、この点に限ってはまさにポイントを衝いている。安倍首相は、例によってポーカーフェースで「今年1~9月の経済はまだ成長している」といなしたが、内心は少し苦しかっただろう。首相は消費税増税を勧めた財務官僚や財務省ご用学者・エコノミストに強い不信感を抱く。だが、公には「失敗」を認めるわけにはいかないのだ。
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