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2014-12-05 10:05
ヘーゲル国防長官の辞任の余波
川上 高司
拓殖大学教授
11月24日、ヘーゲル国防長官の辞任が発表された。ISISとの闘いやエボラ出血熱問題、まもなく終了するアフガニスタンからの撤退など難問が山積みの最中の辞任に動揺は隠せない。しかも中間選挙で民主党が大敗を喫した直後である。民主党政権にあって、唯一の共和党であるヘーゲル国防長官の辞任は憶測を呼んでる。チャック・ヘーゲル氏が国防長官に就任したとき、国防費の削減とそのための議会工作、外交政策の立て直しが期待されていた。特に外交政策では、外交優先で国務長官が外交を主導するという立場を明確にするため、ヘーゲル長官自身が「ケリーの時代だ」と言い切り、国防総省は舞台裏にまわり予算削減と改革に取り組んでいた。
だがウクライナ問題でロシアとの関係が悪化し、さらにいまやISISの勢力が拡大しアメリカは派兵をするかどうかの決断を迫られている。デンプシー統合参謀本部議長が11月初旬の下院での公聴会では派兵に前向きな姿勢を示す一方で、ヘーゲル長官は「派兵はありえない」と否定し、軍部との不協和音も表面化している。
ヘーゲル長官は前ブッシュ大統領がイラク戦争を始める時、強硬に反対した。そのヘーゲル長官が再びイラクへと派兵をし「戦時長官」となることは、信念を曲げることになる。信念は曲げられない。戦争は二度としないとの強い思いをもつベトナム帰還兵である彼は、10月下旬には辞任を大統領に申し入れていた。おそらく自身の信条に近いヘーゲル長官の辞任を受け入れることは、オバマ大統領にとっても厳しいことだったに違いない。オバマ大統領は米軍は派兵をしないという方針を貫こうとしているが、ヘーゲル長官の辞任でその外交政策の転換は不可避となる可能性がある。
すでに次期長官候補が取り沙汰されている。初の女性長官となるかもしれないと期待されているミッシェル・フロノイ氏は早々に就任の可能性を否定し、他の候補も「関心がない」とつれない。オバマ政権の対ISIS政策は転換が求めらておりより強硬になれば派兵し再び泥沼の戦争へと行き着きかねない。要するに誰もババを引きたくない、というのが本音であろう。それほどに外交政策は行き詰まっているのである。
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