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2014-11-29 19:06
洋の東西を問わず勢いを増しているルサンチマンの政治
加藤 朗
桜美林大学教授
ルサンチマンの政治が世界中に広がっている。貧困がテロの温床というのは、イスラム国の出現で見事に否定された。イスラム国の戦闘に参加するために、世界中から志願兵が集まっている。その理由はルサンチマン(恨み)だ。母国で居場所が見つからない人々が母国にルサンチマンを抱き、自らを受け入れ居場所を与えてくれるイスラム国に共感を覚えるのは当然のように思う。そしてそのイスラム国は、まさにその名前が物語るように、かつての欧米列強へさらには西洋キリスト教諸国へのルサンチマンを晴らすために戦っている。
彼らの目的はイスラム国の建国である。それは欧米列強が恣意的に画定した国境線を否定すなわち西洋主権国家を否定することである。それはとりもなおさず、イスラムを否定した西洋キリスト教諸国へのルサンチマンを晴らすことである。だからこそ、国際法も無視し、欧米流の人権も否定し、人質の処刑も残酷になるのである。ルサンチマンの動きはイスラム国に限らない。中韓が日本に歴史認識問題を仕掛けてくるのは、まさに日本の植民地化に対するルサンチマンである。かつて、日本は中国が弱体化した時「死せるクジラ」と称して欧米列強とともに中国を蚕食し、台湾、韓国を植民地化した。今や立場は逆転した。20年以上にわたる長い経済低迷、それにとどめを刺すかのような東日本大震災と原発事故。安倍政権の掛け声もむなしく、日本の長期低落は避けられない。
弱体化した日本にこれまでのルサンチマンを晴らそうと、中韓が歴史認識問題を仕掛けている。ことは南京問題や慰安婦問題ではない。まさに歴史認識問題である。これまでのアジア一の大国としての歴史認識を日本が改め、二位、三位になったことを日本国民が受けいれるまで、つまりは中韓が日本より心理的に優位に立ち、それを具体的に日本人が受け入れるまで歴史認識問題は解決しない。慰安婦問題や産経新聞記者の拘束問題を日本が全面的に謝罪し竹島を放棄し、そして最終的には日本がかつて韓国皇帝を廃位させたように、天皇を廃位させるまで韓国の攻撃は続くだろう。
洋の東西を問わず、ルサンチマンの政治が勢いを増している。これまで劣位に置かれていた弱者や弱国が反撃を始めている。それは単に植民地化へのルサンチマンでとどまるのか、あるいは文明や宗教に基づくルサンチマンとなるのか。ルサンチマンに基づく草の根の第三次世界大戦がすでに始まっている。
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