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2014-11-25 06:46
選挙論争はアベノミクスの数字に訴求力
杉浦 正章
政治評論家
アベノミクス解散の緒戦の論戦を分析すれば、かさにかかって「景気失速」を追及する野党に、自公政権側は過去2年間の「経済実績」で対抗する形が浮かび上がっている。野党はいわば足元の景気実感、与党は実績を背景にしたデフレ脱却への期待感を説く。総じて野党の攻撃に与党は「言い訳」するように見えるが、逆に数字上の説得力は与党側にある。解散に大義あるなしの「大義論争」は明らかに首相・安倍晋三の負けだが、選挙戦が進むにつれて具体的な政策論争に移行せざるを得ない。雇用にしても賃上げにしても民主党政権時代と比較された場合、反論の余地がないだろう。その上で、「デフレ脱却へあと一歩」を訴える安倍に、有権者の多くが希望を託さざるを得ないだろう。要するに今回の選挙は訴求力、アピール度の勝負だ。第3極はブームが完全に去って失速、初期の論争から見る限り、政権交代が実現するほどの風は吹きようがないと見る。解散の大義があるかどうかが当初の議論の焦点となっていたが、いざ解散されてしまうと、野党も大義にこだわってばかりはいられない。もともと今回の解散は党利党略・個利個略解散であるから大義はないのだが、大義という漠然とした用語は訴求力に欠ける。安倍は「アベノミクス解散」と位置づけ、「景気回復この道しかない」の旗印の下に、自らに有利な経済論争に引き込もうとしている。野党も不承不承ながら事実上これに応ずるしかないように思える。
不況かどうかを計るバロメーターは何と言っても「雇用」にある。不況下では「街に失業者があふれ」が常套文句だが、アベノミクス以来雇用は100万人増加し、うち女性は80万人だ。有効求人倍率は1.09倍、完全失業率は3.6%で先進国中もっとも良好な水準にある。野党は非正規雇用が増えただけと主張するが、非正規であろうとなかろうと雇用は雇用だ。「失業」とは天と地の違いがある。賃上げも春は過去15年間で最高の2%に達した。野党は合唱のように実質賃金の目減りを主張するが、民主党政権時代までは賃金の長期低落が続いたのであり、賃上げなどと言う言葉は夢のまた夢であった。上がるだけでも、デフレ経済のトンネルの先に明るさが見えてきたという主張の方がアピールするだろう。倒産件数も2割以上減少し、24年ぶりの水準となった。さらに野党は7-9月のGDPがマイナス1.6という異常な下がり方を見せたことを指摘するが、筆者は異常気象や自然災害による部分があり、一時的ではないかと思う。10-12月期以降の数字を見なければ分かるまい。7-9でも個人消費が0.4%上向いていることが、改善の兆しと見る専門家も多い。
自民党がこうしたアベノミクスの「実績」を前面に打ち出した論争に引き込むことに成功すれば、かなり説得力が生じて来るのだ。野党は選挙を前にして狡(こす)っ辛くも増税延期に踏み切った民主党が象徴するように、解散が急襲であったため、攻撃の突破口を見つけるのに四苦八苦なのだ。おまけに「マニフェスト」という虚飾の呼称も完全に色あせ、民主党は公約に数値目標も入れられない体たらくだ。同党幹事長・枝野幸男は「豊かなものが豊かになるだけで大部分の皆さんはそのしわ寄せで苦しくなっているのがアベノミクスの実態」と、昔の左翼政党のように感情に訴える“格差強調”戦術に出ているが、これは一部国民の「ひがみ根性」に訴えるものであり、何の生産性もない。経済のイロハも知らずに政権を担当した鳩山由紀夫が象徴するように、民主党政権は株価を上げるすべも知らなかったのだ。株価は未来を予測しているのであって、下がるより上がった方がよいに決まっている。こうして経済論争では6対4か、5.5対4.5で安倍有利に展開すると思う。一方で外交・安保論争に至っては、野党が付け入る隙がない。他国の領海に侵入を繰り返す中国が存在し、ミサイルと核を弄ぶ北朝鮮。間違った歴史認識を金科玉条とする女性大統領の韓国。これら近隣諸国の「理不尽」は国民の誰もが感じていることである。安倍が地球俯瞰外交で中国を封じ込め、日米豪準軍事同盟で対峙(たいじ)する路線は、国民に支持されている。民主党は対案を出さずに集団的自衛権の撤回を求めているが、まるで何でも反対の社会党に先祖返りしたとしか思えない。集団的自衛権の閣議決定と秘密保護法実施も含めて、外交・安保論争は9対1で安倍の勝ちだ。
一方で原発論争だが、反対派は何回国政選挙で負けたら気が済むのかと言いたい。衆院選挙では未来の党などという原発否定だけの政党が壊滅し、参院選挙でも野党は過半数割れをした。いずれも原発維持の自民党が大勝だ。それにもかかわらず、左傾化マスコミが今度は原発再稼働を軸に、有権者のマインドコントロールをして争点に押し出そうとしている。電気料金と石油価格高騰に悩む庶民のことなど知ったことではないとばかりに、再燃させようとしている。しかしこの問題も過去2回と同じように反対派の敗北に終わるだろう。7対3で安倍の勝ちだ。第3極は橋本徹の不出馬、みんなの党の空中分解が象徴するように完全に失速した。共同代表・江田憲司では守りが精一杯で維新拡大に弾みはつかない。ただしNHKの日曜討論を見る限り、自民党政調会長・稲田朋美は論争能力と技術に欠けている。企業の海外移転について「企業がどんどん戻ってきて、どんどん移転をやめている」と述べたのを、民主党政調会長の福山哲郎に「あまりいいかげんなことを言わない方がよい」と指摘されて一本取られた。福山に「少なくとも政府・与党の政策責任者ですよ。もっと根拠のあることを言ってもらわないと困る」とたしなめられたが、多くの視聴者が頼りないと感じただろう。選挙という食うか食われるかの場面であり、テレビ討論には出さない方がよい。野党がチャンスとばかりに攻撃の対象とする。
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