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2014-11-12 17:43
7%成長でも中国大不況の理由
田村 秀男
ジャーナリスト
中国政府は7~9月期の実質経済成長率が前年比7・3%だったと発表した。日米欧で実質成長率が7%台なら、とんでもない高水準で好景気に沸き立っているはずなのに、中国ではかなりの不況だという。経済専門紙の日経新聞を含めメディアは説明してくれないが、なぜそうなのか、解明しよう。中国の国内総生産(GDP)統計が信憑性に欠けることは、ほかならぬ中国の李克強首相が遼寧省の党書記時代の2007年に米国の駐中国大使に言明した。李氏が信用する経済統計は鉄道貨物輸送量と銀行融資の動向だという。
筆者はそこで、中国経済動向を分析するとき、GDPと鉄道貨物輸送量の増減率を照合することにしている。銀行融資も参考にはするが、中国の場合、金融は党中央の指令次第で大きく変化するので、党中央の政治的裁量を加味しなければならない。その点、鉄道貨物輸送量は運賃収入をもとに算出し、人為的操作の余地は少なく、実際のモノの動きをそのまま反映する。実質成長率と鉄道貨物輸送量の前年比を縦軸にとり、実質成長率8%と鉄道輸送量の伸びゼロ%をそろえたグラフを見ると、成長率が8%以下に沈むときはほんの一時期を除いて、輸送量がマイナスの伸びに落ち込んでいることが読み取れる。
農漁業と工業部門、つまりモノの生産がGDPの5割を占める中国では、物流の動きが経済活動に大きく反映する。そこで、鉄道貨物輸送量の伸びが実体経済、つまり実質経済成長率だと解釈すれば、北京当局発表の実質経済成長率7%台の伸びは、経済実体からすれば、マイナス成長の状態だといえそうだ。現実の中国経済は今、かなり深刻な景気後退期にあると、筆者はみる。現在とリーマン・ショック当時を比較してみるとよい。リーマン後、当局発表の実質成長率は6%台に落ち込み、鉄道貨物輸送量はマイナス5・9%になった。北京の大号令で銀行は融資を3倍以上も増やして景気を再浮上させたが、不動産バブルが膨張し、12年秋にはバブル崩壊不安が起き、実質成長率は8%ラインを割り込んだ。鉄道貨物の伸びは急降下し、リーマン後の下落幅をしのぐ。13年の秋には持ち直したものの、ことしは再び前年比マイナスだ。
頼みは米欧向けの輸出回復だが、米国景気は力強さに欠けるし、欧州ではデフレ圧力が高まっている。内需のほうは、不動産価格の下落が全土に広がり、不動産に投資し、不動産価格上昇を当てにしてきた中間層以上のフトコロを直撃している。自動車や家電の過剰生産は慢性化し、中国の内需を当て込んできた外資の中には縮小、撤退を検討する動きも目立つ。家電やスマホでは中国メーカーが安値攻勢を強めており、韓国のサムスンなどが打撃を受ける。他方で、中国は日本の高付加価値の製品技術獲得のために、対日関係を改善したい。焦る北京は日中首脳会談開催に前のめりなのだ。
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