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2014-10-02 11:15
やはり米露関係が鍵となるISIS問題
川上 高司
拓殖大学教授
1年前の9月は、アメリカがシリアへ空爆をすると宣言し世界が新たな戦争が起こるのではと震撼していた。このとき世界で反対運動が起こり国や宗教を超えて反戦が強く訴えられ、またロシアがシリアの化学兵器放棄の仲介をしたため空爆は見送られ、世界は安堵に包まれた。そして米露関係の改善が予感された。そして今年の9月、オバマ大統領はISISを脅威とみなしてイラクやシリアのISISの拠点を空爆開始した。今回は昨年と異なり国際社会の支持が高かった。空爆を受けているシリア政府も、アメリカの空爆がISISをターゲットに絞っているため歓迎している。
オバマ大統領はNATO諸国と会談し、主要国だけでなくトルコやオーストラリアなどからも支持を取り付けた。さらにアラブ諸国からも同意を取り付けて入念に下地を作った。シリアの支援国であるイランへは、空爆の前に通告するという徹底ぶりである。だが、肝心のロシアの協力は得られていない。アメリカは水面下でロシアへ秋波を送って協力を呼びかけているが、ロシアは応じる気配がない。ロシアはシリア政府に軍事支援を実施している。それに対して、アメリカは反政府勢力を支援している。今回のアメリカの空爆の本当の意図はアサド政権の転覆ではないかという不信感が、ロシアを消極的にしているのである。
9月15日パリで開かれたイラクに関する国際会議では、ケリー長官はアメリカはアサド大統領を退陣させる意図はないとロシアのラブロフ外相へ呼びかけた。さらにその後、米露の外交専門家たちがモスクワで極秘会合を開いたが、ロシア側の反応は冷たかった。シリア問題では溝が埋まらないがイラク問題では協力しあえるのではと期待をこめて、アメリカはロシアへイラクでの協力を呼びかけるが、ロシアの不信感は解消されないようである。
ISISやシリアの問題でロシアの協力は不可欠である。だが、アメリカのシリア反政府側への関与やウクライナ問題でひびの入った信頼関係を修復するのは容易ではない。それでも希望がないわけではない。ロシアにとってもISISは脅威である。その脅威がロシアにとって無視できないほど高まれば協力姿勢に転じる可能性はある。地道な外交努力が求められている。
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