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2014-09-25 10:41
「日本版台湾関係法」より日台FTAを
高峰 康修
岡崎研究所特別研究員
自民党には、かねてより、日台関係強化の法的根拠とすべく「日本版台湾関係法」(仮)の策定を目指す動きがある。最近の風潮として、何でも「日本版○○」と言いたがるのは如何かと思うが、それはともかくとして、日台関係を強化すべきであるという問題意識自体は間違っていない。そして、19日に来日した、台湾の李登輝元総統も、これを支持し、推進を呼びかけた。
ところで、本家である米国の台湾関係法は、1979年の米国と中華民国との断交に際し制定されたもので、(1)外交関係の事実上の維持、(2)台湾に対する武器供与、(3)台湾防衛、を柱とする。これは、米国の国内法に基づく「米台同盟」に他ならない。「日本版台湾関係法」を制定するとすれば、同様のものとすべきだが、果たして実現可能であろうか。確かに、法的には、武器輸出三原則は防衛装備移転三原則に改められているし、集団的自衛権の行使も容認されたので、上記三点とも可能ではあろう。しかし、米国は外交関係を「維持」したが、日本の場合はそうではないので、政治的ハードルが高く、法制化が極めて困難であることは容易に想像される。問題は、それだけの政治的エネルギーを使って、それに見合ったものが得られるか否かである。
現在、日台の交流は、交流協会と亜東関係協会を通じて行われている。外交関係が無いのは確かに不便であろうが、日台漁業協定が昨年結ばれたことに象徴されるように、現行法の下でも、日台の実務的関係は良好である。また、日本から台湾への武器あるいは武器技術供与、台湾防衛へのコミットメントは、米国との協力という形で実施し得るであろう(周辺事態法は、台湾有事を想定している)。こうした議論は、もちろん進めていくべきだが、実現したとしてもせいぜい象徴的なものに留まると考えられ、「日本版台湾関係法」が無くとも可能である。
対台湾戦略で最も重要なことは、台湾を地域において、政治的にも経済的にも孤立させないことである。日本や地域は、台湾を政治的に疎外しているとは思われない。むしろ、台湾は、馬英九政権発足後、中台間の経済的結びつきを求める余り、経済の対中依存度が高まっていることが問題となっている。すなわち、地域における、経済的孤立の方が懸念される。台湾の中からも、これは不都合なのではないかとの声が高まっている。その象徴が、今春の立法院占拠事件(ひまわり運動)である。日本として最優先になすべきことは、台湾との経済関係を強化することである。具体的には、日台FTAの早期実現に向けた交渉の開始である。台湾は、昨年、シンガポール、ニュージーランドとFTAを締結したが、日本とのFTAが実現すれば、経済的のみならず政治的にも意義は格段に大きい。「日本版台湾関係法」も悪いとは言わないが、現行の法制度の下でなし得る、実質的な日台関係の充実を図ることにこそ、優先的に政治的エネルギーを投下するべきであろう。
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