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2014-09-11 21:07
中華帝国の再興には、精神文明の復興が必要条件だ
若林 洋介
自営業
最近の中国『環球時報』(人民日報・国際版)では、ハンチントンの『文明の衝突』が話題となっているようです。またAmazon.Chinaを覗くと、ハンチントンの『文明の衝突』やトインビーの最晩年の著作『人類の母なる大地』などの中国語版が出版されています。中国の知識階級の間で、ハンチントンの『文明の衝突』が読まれていることは歓迎すべき傾向です。同書の中で、中華文明に対する評価が高かったことが、中国人のプライドをくすぐったのかも知れません。しかしながら、本当の意味で中華文明を開花させるためには、「文化・教養大国」を目指さなくてはなりません。米国を真似するとすれば、世界中の優秀な科学者・文化人・芸術家を招聘して、思う存分才能を発揮させることが出来なくてはなりません。それこそが「世界帝国」の最重要要件なのです。
日本国民が中華文明から多くを学んだ時代は、大唐帝国の時代で、260年間にわたって遣唐使を派遣しました。唐の都・長安の都市計画、律令体制、均田法などを学びました。また空海上人は、真言密教を恵可和尚から指導を受けました。長安は仏教という精神文化のメッカでもあったのです。世界最高峰の精神文化の隆盛こそが、「世界帝国」としての「大唐帝国」の最大の魅力でした。空海上人は、帰朝後、平安京の都に種芸種智院という学校を建て、その「校則」に次のような文章を著しています。「かの唐の長安城には都内のあちこちに学童を教育するための学校を建てて、広く児童達を教えております。またそれぞれの地方には地区の学校を開いて、広く学童を指導しています。だから、唐の国では才能ある立派な人々が都内に満ち溢れており、学芸の人は国中にいっぱいおります。ところが、わが国の平安京には貧しい児童が勉強しようとしても、どこをたずねてよいかわかりません。」
中国が「中華帝国の再興」を目指すとするならば、かつての大唐帝国のように、世界中から優秀な人材が集まり、憧憬されるような精神文明の隆盛を目標としなくてはなりません。経済大国・軍事大国は、本当の意味での「世界帝国」ではありません。中国が本当に「世界帝国」を目指すというのなら、仏教・儒教・道教・キリスト教・イスラム教を包容するだけの包容力が必要です。「領土を広げること」だけで「中華帝国の再興」が実現できると考えているのなら、大きな勘違いです。
中国国民の「精神文化の領域」を広げる努力をせずして、「世界帝国」の夢は実現しません。現代の日本文明は、古代の神道、奈良・平安・鎌倉の仏教、江戸の儒学、国学、明治以降のキリスト教の流入と古今東西の精神文明を受容・包摂して今日に至っております。中国国民は、今こそ日本文明の豊かさから学ぶべきなのです。そうすれば過去の中国文明の偉大さを再発見するでしょう。そしてさらに偉大な中華文明を創造すべきなのです。それができた時に、本当の世界帝国としての「中華帝国」が完成するのです。
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