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2014-07-30 11:52

エスカレートするイスラエルの報復

川上 高司  拓殖大学教授
 イスラエルの少年3人の誘拐・殺害事件の報復としてイスラエルはガザ地区の徹底的な空爆を開始した。イスラエルは、3人の犠牲者の報復としてパレスチナの少年1人を誘拐して殺害した。だが怒りの感情はそれでとどまらず、空爆が開始された。ハマスがロケット弾の報復を始めると空爆をエスカレートさせ、情勢は一気に不穏なものとなった。

 ガザ地区では空爆による死傷者が病院や街に溢れかえっている。そもそも日常的に物資が不足しているところに空爆によって負傷者が増えたため、病院はパニックに陥っている。医薬品はもとより医療器具などが不足しさらには発電機を動かすガソリンすら不足し始めている。救急車を動かすことができなくなる日も近いという。空爆の被害は直接負傷する負傷者だけではない。病院が負傷者の対応に追われ医薬品が使われるために、疾患を抱えた患者たちの治療が後回しになってしまっているのである。

 ガザに住む3才の男の子はがんの手術を受けるはずだった。だが空爆による負傷者に追われる病院では、医薬品の不足のため手術の延期を決定した。父親は毎日病院へ行って手術をしてほしいと頼むが病院側の返事はノーである。こどもの命は危機にさらされている。病院側によると、抗生物質や麻酔薬をはじめ重要な医薬品が足りないのである。手術のための電力すら確保できないという。すでに在庫が枯渇した医薬品もまもなく枯渇する医薬品も少なくないが、入荷の目処は立っていない。さらに、今後イスラエルの攻撃がエスカレートすることが予測されるので来るべき時に備えて医薬品を残しておかなければならない。

 そのため病院側は、病院の業務を縮小して最小限度に抑えて医療品の節約をする段階に入っている。さらに空爆が続けばほとんどの病院を閉鎖せざるを得ないという。そうなれば失われていく命は空爆の犠牲者だけにととまらずさらに増える。ガザ地区の人々はまさに深刻な人道的危機にさらされている。今こそオバマ政権のリベラル・ホークたちの活躍を期待したい。
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