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2014-07-16 05:57
川内を皮切りに原発の基幹電源化を推進せよ
杉浦 正章
政治評論家
遅れに遅れたが、原子力規制委員会がようやく原発再稼働第1号機を出す事を認めた。7月16日に規制委は、九州電力川内(せんだい)原発1、2号機について、事実上の合格証となる「審査書案」を提示する。地元の了承手続きなどを経て、秋には稼働する方向だ。これを突破口として窮迫した日本のエネルギー事情に明るい日差しがさしはじめることになる。一部国民の原発アレルギーが次第に除去され、世界の原発ブームの潮流に乗ることが出来る。政府は地球温暖化による気候大変動と、これによる死亡事故続出に歯止めをかけるためにも、再稼働だけでなく、新設も視野に、エネルギーのベストミックスを推進しなければなるまい。それにしても夏の電力最需要期に間に合わなかったのは問題である。世界一厳しい基準を規制委が発表したのが、昨年の7月8日だった。当初は半年で稼働1号機が出ると予想されていたが、遅れに遅れた。規制委の一地質学者がブレーキをかけ続けたことに加えて、審査の大幅遅延、電力会社の書類の不備などが重なったのが原因である。
この結果、我が国が原発を導入して以来、半世紀ぶりに原発ゼロの夏に入った。停電にならないための電力供給余力は3%以上必要とされるが、関西電力は1.8%、九州電力は1.3%しかない。東電などからの支援でやりくりしているが、火力発電所は、老朽化で事故が頻発、いつ停電が起きてもおかしくない。停電となれば、病院の重症患者などに死者が続出すると予想されている。冷房だけではない、電力が命綱の患者は多いのだ。日本の原発の停止を、狡猾なる石油産出国やLNG輸出国は商機とみて、足元を見る動きに出た。LNGは平均より2割高で買わされており、折からの中東危機も加わって、石油価格も高騰を重ねている。国富は年間4兆円流出し、日本人1人あたり4万円が化石燃料費に消えている。電気料金は上昇し続け、東電で4割、関電で3割の上昇だ。何よりの問題は、原発のストップで地球温暖化の原因である二酸化炭素が垂れ流しになっていることだ。最近の気候大変動は紛れもなく地球温暖化が原因であり、世界的な自然災害は増加の一途をたどっている。世界的に見ても原発事故による死亡者より発電ダムの決壊による死亡者の方が断然多い。
去る5月に米紙ニューヨーク・タイムズは、「チェルノブイリ原発で起きた事故でさえ、化石燃料を燃やすことで地球が被るダメージとは比較にならない」として、温暖化対策のため当面、原発が必要とする社説を掲載した。「チェルノブイリからの正しい教訓」と題した社説で「原子力発電の危険性は現実のもの」と指摘しながらも、「再生可能資源が全ての化石燃料や原子力の燃料を代替できるのは遠い先のこと」とし、それまでは原発が大気中の温室効果ガス濃度を上げずに発電する「重要な手段となる」と位置づけたのだ。全く同感であり、日本の一部新聞は、NYタイムズの爪の垢でも煎じて飲むべきだ。日本でも原発事故での死亡者はないが、集中豪雨や洪水など異常気象での死者が増大している現実を直視する必要がある。それにもかかわらず国内では、原発アレルギーに立脚した観念論が依然幅を利かせている。今や自民党にとって“お荷物”そのものになった小泉純一郎や、国家にとって“お荷物”の菅直人が「原発ゼロ」で金切り声を張り上げている。福井地裁では大飯再稼働訴訟で厳しい地震基準についてなんと「それを超える地震が来ないという確たる根拠はない」と支離滅裂な判決を出した。「100万年に一度の地震があるから駄目」といっているに等しい。無知蒙昧(もうまい)をさらけ出した判決である。
まさに原発再稼働反対論は秘密保護法反対、集団的自衛権の行使反対とともに「日本の三大非常識」となっている。いずれも根拠のない風評をメディアが垂れ流し続け、これに国民が踊らされるという亡国の構図である。滋賀県知事選で「卒原発」なる主張をした知事が誕生したが、1知事選の動向に左右されるべきでもない。最近では原発が最大の焦点になった都知事選で「原発ゼロ」を主張した細川護煕と小泉が大敗北を喫しているではないか。二度の国政選挙でも原発ゼロ派は見る影もなく敗北している。官房長官・菅義偉が「卒原発」について「再稼働への影響はまったくない。原子力規制委員会が『安全』と認めた原発は再稼働する」と言い切ったのは当然であるし、頼もしい。今後、川内再稼働を皮切りに、再稼働申請中の12原発19基の稼働を着々と推進すべきであろう。電力会社にとって川内原発が合格することの意義は大きい。なぜならば、申請書類や手順においても川内がモデルケースとなるからだ。いわば合格のためのノウハウを川内が示したことになるからだ。
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